だ。
 ――われわれはここへ来る、太陽が再び上に来る頃に……。
 ――よろしい。分った。早く帰れ。
 ウラル号は再びエンジンを廻して、早々に怪人城塞から立ち去らねばならなかった。

  意外な行動

 ワーナー博士たちは、その翌日、まだ疲れの取れない身体に鞭打って、再びウラル号を駆って海底の冒険に乗出した。
 ところが意外なことに、昨日に引換え、今日はレーダーに怪人城塞が感じなかった。
 どうしたんであろうか。
 たとえレーダーに感じなくても、怪人城塞の位置は分っていたので、航海には困らなかった。
 現場に近づくに従って、怪人城塞が、有るべき場所から姿を消しているのが確かとなった。
「どうしたんだろうか。怪人たちは移動したんだろうか」
「でも、われわれは動けないと、咋日|滾《こぼ》していたようだが……」
「そうだったね。だが、たしかに見えない。早く傍まで行ってみよう」
 ワーナー博士たちは不審にたえない面持ちで、ウラル号を現場へ急がせた。
 現場に到着して発見したものは、潜水服に身を固めた三人の人間――ワーナー調査団員だけだった。彼等は直ちに艦内へ収容された。
 三人は救助されると、一せいに気を喪《うしな》ってしまった。が、すぐ潜水服を脱がせて、手当を加えたので、間もなく息を吹きかえした。
 二人の助手と、ホーテンス記者だった。
「いや、ひどい目に遭いましたよ。何しろ言葉が通じないのでね。一番困ったのは食事だった。妙なものを食わせられた。嘔《は》きそうになるのを、むりに嚥《の》みこんだ。死んではならないと思ったのでね……」
 と、ホーテンス記者は、すっかり憔悴《しょうすい》した顔に、持前《もちまえ》の不敵な微笑を浮べて語り出した。
「今から十時間ばかり前のことでしたよ。僕たち三名は一旦脱がされていた潜水服を着せられ、それから外へ出されたんです。おやおや、どうするつもりかなと思っていたら、それから暫くして彼奴等の船――怪人城塞てぇやつですかね――それがすうっと浮き上った。僕たちがあれよあれよと見まもっているうちに、あの船はだんだん上へあがってしまって、やがて見えなくなったんです。誰か知っていますか。あの化物たちの船の行方を……」
 誰もそれに応える者はいなかった。
 後に分かったことであるが、丁度その時刻と思われる深夜のこと、或る哨戒機《しょうかいき》が、夜空に虹のよ
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