して海底に叩きつけられたが、そのはげしい衝撃によって今まで喪っていた意識を恢復した。
 博士の身体が動き出したのを、水戸記者はすぐに見て取った。彼は喜びの声をあげて、博士に抱きついた。
「ワーナー博士。気がつきましたか。僕は水戸です。お怪我はありませんか」
「ああ、水戸君か。ここ……ここは何処なのかね」
「もうすぐ観測器具を置いてある根拠地ですが……」
「ああ、そうか。やっぱり海底だね。皆はどうした、隊員たちは……」
 水戸は、それについてすぐ応えるべきことばを知らなかった。それを聞けば博士はどんなに嘆くことであろうか。

  宿命の第一|頁《ページ》

 水戸記者は、苦しさを怺《こら》えながら、博士に一伍一什《いちごいちじゅう》を物語った。博士は、大きな溜息をくりかえしながら、部下たちの落ちこんでいった恐ろしい運命に耳を傾けた。
「まあ、こんなわけですが、博士はどうお考えになりますか、あの海底に棲む怪物団の正体を……」
 と、水戸記者は、報告のあとで彼の一刻も早く知りたいと思っていることをワーナー博士に質問した。
 これに対し博士はしばらく沈黙を以てうなづいた。そしてそのあとで呟《つぶや》くようにいった。
「アメリカ・インディアンは、コロンブスの船が着く以前において、この世の中に白人というものが存在することを知らなかった。インディアンとしては、それは無理もないことだと思う。当時のインディアンは驚愕と茫然自失の外に、途がなかったのだ。しかしわれわれの場合はどうであろうか」
「なんといわれます?」
 水戸は問い返さないでいられなかった。
「新しいコロンブスは、地球の外から到着したのだ。遂に到着したのだ。われわれは、昔のインディアンと同じような驚愕と困惑にぶつかった。だがわれわれは昔のインディアンの場合とは違い、実は新しいコロンブスのやがて到来するだろうということを予想し得る能力を備えていたのだ。それにも拘らず、われわれはその用意がなかったのだ。私はある天文学者が遙か以前においてそれに関する警告を発したことを憶えている。しかしわれわれはその可能性を肯定したけれど、まさかそれが、われわれの時代に実現するとは思わなかった。だから、新しいコロンブスを迎える用意は全然していなかったのだ」
「新しいコロンブスというのは何者ですか」
「ああ、それは……」博士は呻《うな》り声をあげ

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