を辛抱《しんぼう》していますと、急に手が吸いつけられるように、電極板に引寄せられました。
「こいつは、いかん!」
 と思う間もなく、指が電極板の端《はし》に触れました。途端《とたん》にうずくような痛みが感ぜられ、同時にコロリと下に落ちたものがあります。サーッと真赤な血が花火のように噴《ふ》き出《だ》しました。
「ウム……」
 実験者はもぎとるように手を強く引きました。手は幸い極板《きょくばん》を離れました。実験者はホッとして、その手を眺めました。ところが、サア大変です。指が足りない! 美事《みごと》に伸びていた四本の指が根こそぎ切り落とされ、残っているのは拇指《おやゆび》一本! 指の無くなった跡からは、盛んに血が飛び出して来る。実験者はサッと蒼《あお》くなりました。一方の手で傷口を抑えたまま、ウンといって其の場に仆《たお》れてしまった。一体どうしたというのでしょう? 医療器《いりょうき》だと思って安心していたのが、俄然《がぜん》殺人器に転じてしまったのです。駭《おどろ》いたのも無理がありません。
 超短波メス――というのが生れたのは、それから間もないことでした。意外な失敗、それは超短波
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