@Night
一
ストラトフォード・オン・エイヴォンへは、なるべくシェイクスピア祭の季節に行きたいと思っていたところへ、折よく水沢君と工藤君に誘われ、水沢君の車で出かけようということになった。ロンドンからストラトフォードまでは九十マイルそこそこで、汽車で行っても四時間ぐらいなものだけれども、イギリスの田舎はどこも綺麗で公園のようだから、自由のきく車でドライヴすることができたら、それに越したことはないのだ。
時は四月の中旬で、空を見ても樹を見てもなんとなく春めいて来たし、それに私のイギリスでの講義もやっと片づいたし、ローマにいた長男からは大学で講座を持つことにきまったといって来たし、つい二三日前、日本からの便りでは、二男は福岡へ転任して、これも新設の物理学の講座を持つことになるらしく、三男も工学部に入学ができたという知らせがあったので、私たちは久しぶりでほがらかな気持になって旅に出かけられたのであった。
誰かが、ストラトフォード・オン・エイヴォンのことをイギリスのメッカだと言っていたが、少くともイギリス文学をかじってる者にとっては、シェイクスピアの生れた土地、シェイクス
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