と量とにおいて各※[#二の字点、1−2−22]あらはるゝ姿を異にす 六四―六六
もし粗密のみこれが原因《もと》ならば、同じ一の力にてたゞ頒《わか》たれし量を異にしまたはこれを等しうするもの凡《すべ》ての光の中にあらむ 六七―六九
力の異なるは諸※[#二の字点、1−2−22]の形式の原理の相異なるによらざるをえず、然るに汝の説に從へば、これらは一を除くのほか皆亡び失はるにいたる 七〇―七二
さてまた粗なること、汝の尋《たづ》ぬるかの斑點《はんてん》の原因《もと》ならば、この遊星には、その材の全く乏しき處あるか 七三―七五
さらずば一の肉體が脂《あぶら》と肉とを頒《わか》つごとく、この物もまたその書《ふみ》の中に重《かさ》ぬる紙を異にせむ 七六―七八
もし第一の場合なりせば、こは日蝕の時、光の射貫《いぬ》く(他の粗なる物體に引入れらるゝ時の如く)ことによりて明らかならむ 七九―八一
されどこの事なきがゆゑに、殘るは第二の場合のみ、我もしこれを打消すをえば、汝の思ひの誤れること知らるべし 八二―八四
もしこの粗、穿《うが》ち貫《つらぬ》くにいたらずば、必ず一の極限《きはみ》あり、密こゝにこれを阻《はゞ》みてそのさらに進むをゆるさじ 八五―八七
しかしてかしこより日の光の反映《てりかへ》すこと、鉛を後方《うしろ》にかくす玻※[#「王+黎」、第3水準1−88−35]《はり》より色の歸るごとくなるべし 八八―九〇
是においてか汝はいはむ、奧深き方より反映《てりかへ》すがゆゑに、かしこにてはほかの處よりも光暗しと 九一―九三
汝等の學術の流れの源《もと》となる習《ならはし》なる經驗は――汝もしこれに徴せば――この異論より汝を解くべし 九四―九六
汝三の鏡をとりて、その二をば等しく汝より離し、殘る一をさらに離してさきの二の間に見えしめ 九七―九九
さてこれらに對《むか》ひつゝ、汝の後《うしろ》に一の光を置きてこれに三の鏡を照らさせ、その三より汝の方に反映《てりかへ》らせよ 一〇〇―一〇二
さらば汝は、遠き方よりかへる光が、量において及ばざれども、必ず等しくかゞやくを見む 一〇三―一〇五
今や汝の智、あたかも雪の下にある物、暖き光に射られて、はじめの色と冷《つめた》さとを 一〇六―
失ふごとくなりたれば、汝の目にきらめきてみゆるばかりに強き光を我は汝にさとらしむべし ―一一一
それいと聖なる平安を保つ天の中に一の物體のめぐるあり、これに包まるゝ凡《すべ》ての物の存在はみなこれが力に歸《き》す 一一二―一一四
その次にあたりてあまたの光ある天は、かの存在を頒ちて、これを己と分たるれども己の中に含まるゝさま/″\の本質に與へ 一一五―一一七
他の諸※[#二の字点、1−2−22]の天は、各※[#二の字点、1−2−22]異なる状《さま》により、その目的《めあて》と種《たね》とにむかひて、己が衷《うち》なる特性をとゝのふ 一一八―一二〇
かゝればこれらの宇宙の機關は、上より受けて下に及ぼし、次第を逐《お》ひて進むこと、今汝の知るごとし 一二一―一二三
汝よく我を視、汝の求むる眞理にむかひてわがこの處を過ぎ行くさまに心せよ、さらばこの後|獨《ひと》りにて淺瀬を渡るをうるにいたらむ 一二四―一二六
そも/\諸天の運行とその力とは、あたかも鍛工《かぢ》より鐡槌《つち》の技《わざ》のいづるごとく、諸※[#二の字点、1−2−22]のたふとき動者《うごかすもの》よりいでざるべからず 一二七―一二九
しかしてかのあまたの光に飾らるゝ天は、これをめぐらす奧深き心より印象《かた》を受けかつこれを捺《お》す 一三〇―一三二
また汝等の塵《ちり》の中なる魂がさま/″\の能力《ちから》に應じて異なる肢體《したい》にゆきわたるごとく 一三三―一三五
かの天を司《つかさど》るもの、またその徳をあまたにしてこれを諸※[#二の字点、1−2−22]の星に及ぼし、しかして自ら一《いつ》なることを保《たも》ちてめぐる 一三六―一三八
さま/″\の力その活《い》かす貴《たふと》き物體(力のこれと結びあふこと生命《いのち》の汝等におけるが如し)と合して造る混合物《まぜもの》一《いつ》ならじ 一三九―一四一
悦び多き性《さが》より流れ出づるがゆゑに、この混《まじ》れる力、物體の中に輝き、あたかも生くる瞳の中に悦びのかゞやくごとし 一四二―一四四
光と光の間にて異なりと見ゆるものゝ原因《もと》、げに是にして粗密にあらず、是ぞ即ち形式の原理 一四五―
己が徳に從つてかの明暗を生ずる物なる。 ―一五〇
[#改ページ]
第三曲
さきに愛をもてわが胸をあたゝめし日輪、是《ぜ》と非《ひ》との證《あかし》をなして、美しき眞理のたへなる姿を我に示せり 一―三
されば我は、わがはや誤らず疑はざるを自白せんため、物言はんとてほどよく頭《かうべ》を擧《あ》げしかど 四―六
このとき我に現はれし物あり、いとつよくわが心を惹《ひ》きてこれを見るに專《もつぱら》ならしめ、我をしてわが告白を忘れしむ 七―九
透《す》きとほりて曇《くもり》なき玻※[#「王+黎」、第3水準1−88−35]または清く靜にてしかして底の見えわかぬまで深きにあらざる水に映《うつ》れば 一〇―一二
われらの俤《おもかげ》かすかに見えて、さながら白き額《ひたひ》の眞珠のたゞちに瞳に入らざるに似たり 一三―一五
我また語るを希《ねが》ふ多くのかゝる顏を見しかば、人と泉との間に戀を燃《もや》したるその誤りの裏をかへしき 一六―一八
かの顏を見るや、我はこれらを物に映《うつ》れる姿なりとし、その所有者《もちぬし》の誰なるをみんとて直ちに目をめぐらせり 一九―二一
されど何をも見ざりしかば、再びこれを前にめぐらし、うるはしき導者――彼は微笑《ほゝゑ》み、その聖なる目輝きゐたり――の光に注げり 二二―二四
彼我に曰ふ。汝の思ひの稚《をさな》きをみて我のほゝゑむを異《あや》しむなかれ、汝の足はなほいまだ眞理の上にかたく立たず 二五―二七
その常の如く汝を空《くう》にむかはしむ、そも/\汝の見るものは、誓ひを果さゞりしためこゝに逐はれし眞《まこと》の靈なり 二八―三〇
是故に彼等と語り、聽きて信ぜよ、彼等を安んずる眞《まこと》の光は、己を離れて彼等の足の迷ふを許さゞればなり。 三一―三三
我は即ち最も切《せち》に語るを求むるさまなりし魂にむかひ、あたかも願ひ深きに過ぎて心亂るゝ人の如く、いひけるは 三四―三六
あゝ生得《しやうとく》の幸《さち》ある靈よ、味はゝずして知るによしなき甘さをば、永遠《とこしへ》の生命《いのち》の光によりて味《あぢは》ふ者よ 三七―三九
汝の名と汝等の状態《ありさま》とを告げてわが心をたらはせよ、さらば我悦ばむ。是においてか彼ためらはず、かつ目に笑《ゑみ》をたゝへつゝ 四〇―四二
我等の愛は、その門を正しき願ひの前に閉ぢず、あたかも己が宮人《みやびと》達のみな己と等しきをねがふ愛に似たり 四三―四五
我は世にて尼なりき、汝もしよく記憶をたどらば、昔にまさるわが美しさも我を汝にかくさずして 四六―四八
汝は我のピッカルダなることを知らむ、これらの聖徒達とともに我こゝに置かれ、いとおそき球の中にて福《さいはひ》を受く 四九―五一
さてまたわれらの情は、たゞ聖靈の意《こゝろ》に適《かな》ふものにのみ燃《もや》さるゝが故に、その立つる秩序によりて整《とゝの》へらるゝことを悦ぶ 五二―五四
しかしてかくいたく劣《おと》りて見ゆる分のわれらに與へられたるは、われら誓ひを等閑《なほざり》にし、かつ缺く處ありしによるなり。 五五―五七
是においてか我彼に。汝等の奇《くす》しき姿の中には、何ならむ、いと聖なるものありて輝き、昔の容《かたち》變りたれば 五八―六〇
たゞちに思ひ出るをえざりき、されど汝の我にいへること今我をたすけ我をして汝を認め易《やす》からしむ 六一―六三
請《こ》ふ告げよ、汝等こゝにて福《さいはひ》なる者よ、汝等はさらに高き處に到りてさらに多く見またはさらに多くの友を得るを望むや。 六四―六六
他の魂等とともに彼まづ少しく微笑《ほゝゑ》みて後、初戀の火に燃ゆと見ゆるほど、いとよろこばしげに答ふらく 六七―六九
兄弟よ、愛の徳われらの意《こゝろ》を鎭《しづ》め、我等をしてわれらの有《も》つ物をのみ望みて他の物に渇《かわ》くなからしむ 七〇―七二
我等もしさらに高からんことをねがはゞ、われらの願ひは、われらをこゝと定むる者の意《こゝろ》に違ふ 七三―七五
もし愛の中にあることこゝにて肝要ならば、また汝もしよくこの愛の性《さが》を視《み》ば、汝はこれらの天にこの事あるをえざるを知らむ 七六―七八
げに常に神の聖意《みこゝろ》の中にとゞまり、これによりて我等の意《こゝろ》一となるは、これこの福《さいはひ》なる生の素《もと》なり 七九―八一
されば我等がこの王國の諸天に分れをる状《さま》は、王(我等の思ひを己が思ひに配《そ》はしむる)の心に適《かな》ふ如く全王國の心に適ふ 八二―八四
聖意《みこゝろ》はすなはちわれらの平和、その生み出だし自然の造る凡ての物の流れそゝぐ海ぞかし。 八五―八七
天のいづこも天堂にて、たゞかしこに至上の善の恩惠《めぐみ》の一樣に降《ふ》らざるのみなること是時我に明らかなりき 八八―九〇
されど人もし一の食物《くひもの》に飽き、なほ他に望む食物あれば、此を求めてしかして彼のために謝す 九一―九三
我も姿、詞《ことば》によりてまたかくの如くになしぬ、こは彼がいかなる機《はた》を織るにあたりて杼《ひ》を終りまで引かざりしやを彼より聞かんとてなりき 九四―九六
彼我に曰《い》ふ。完き生涯と勝《すぐ》るゝ徳とはひとりの淑女をさらに高き天に擧ぐ、その法《のり》に從ひて衣を着《き》面※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]《かほおほひ》を付《つく》る者汝等の世にあり 九七―九九
彼等はかくしてかの新郎《はなむこ》、即ち愛より出るによりて己が心に適《かな》ふ誓ひをすべてうけいるゝ者と死に至るまで起臥《おきふし》を倶《とも》にせんとす 一〇〇―一〇二
かの淑女に從はんため我若うして世を遁《のが》れ、身に彼の衣を纏《まと》ひ、またわが誓ひをその派の道に結びたり 一〇三―一〇五
その後、善よりも惡に親しむ人々、かのうるはしき僧院より我を引放しにき、神知り給ふ、わが生涯のこの後いかになりしやを 一〇六―一〇八
またわが右にて汝に現はれ、われらの天のすべての光にもやさるゝこの一の輝《かゞやき》は 一〇九―一一一
わが身の上の物語を己が身の上の事と知る、彼も尼なりき、また同じさまにてその頭《かうべ》より聖なる首※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]《かしらぎぬ》の陰《かげ》を奪はる 一一二―一一四
されど己が願ひに背《そむ》きまた良《よ》き習《ならはし》に背きてげに世に還《かへ》れる後にも、未だ嘗《かつ》て心の面※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]《かほおほひ》を釋《と》くことなかりき 一一五―一一七
こはソアーヴェの第二の風によりて第三の風即ち最後の威力《ちから》を生みたるかの大いなるコスタンツァの光なり。 一一八―一二〇
かく我に語りて後、かれはアーヴェ・マリーアを歌ひいで、さてうたひつゝ、深き水に重き物の沈む如く消失《きえう》せき 一二一―一二三
見ゆるかぎり彼のあとを追ひしわが目は、これを見るをえざるに及び、さらに大いなる願ひの目的《めあて》にかへり來りて 一二四―一二六
全くベアトリーチェにそゝげり、されど淑女いとつよくわが目に煌《きら》めき、視力《みるちから》はじめこれに耐《た》へざりしかば 一二七―一二九
わが問これがために後《おく》れぬ。 一三〇―一三二
[#改ページ]
第四曲
等《ひと》しく隔《へだた》り等しく誘《いざな》ふ二の食物《くひもの》の間にては、自由の人、その一をも齒に觸れざるさきに饑《う》ゑて死すべし 一―三
かくの如く、二匹の猛《たけ》き狼の慾と慾との間にては一匹の羔《こひつじ》
前へ
次へ
全49ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ダンテ アリギエリ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング