《さいはひ》を受く 四九―五一
さてまたわれらの情は、たゞ聖靈の意《こゝろ》に適《かな》ふものにのみ燃《もや》さるゝが故に、その立つる秩序によりて整《とゝの》へらるゝことを悦ぶ 五二―五四
しかしてかくいたく劣《おと》りて見ゆる分のわれらに與へられたるは、われら誓ひを等閑《なほざり》にし、かつ缺く處ありしによるなり。 五五―五七
是においてか我彼に。汝等の奇《くす》しき姿の中には、何ならむ、いと聖なるものありて輝き、昔の容《かたち》變りたれば 五八―六〇
たゞちに思ひ出るをえざりき、されど汝の我にいへること今我をたすけ我をして汝を認め易《やす》からしむ 六一―六三
請《こ》ふ告げよ、汝等こゝにて福《さいはひ》なる者よ、汝等はさらに高き處に到りてさらに多く見またはさらに多くの友を得るを望むや。 六四―六六
他の魂等とともに彼まづ少しく微笑《ほゝゑ》みて後、初戀の火に燃ゆと見ゆるほど、いとよろこばしげに答ふらく 六七―六九
兄弟よ、愛の徳われらの意《こゝろ》を鎭《しづ》め、我等をしてわれらの有《も》つ物をのみ望みて他の物に渇《かわ》くなからしむ 七〇―七二
我等もしさらに高からんことをねがはゞ、われらの願ひは、われらをこゝと定むる者の意《こゝろ》に違ふ 七三―七五
もし愛の中にあることこゝにて肝要ならば、また汝もしよくこの愛の性《さが》を視《み》ば、汝はこれらの天にこの事あるをえざるを知らむ 七六―七八
げに常に神の聖意《みこゝろ》の中にとゞまり、これによりて我等の意《こゝろ》一となるは、これこの福《さいはひ》なる生の素《もと》なり 七九―八一
されば我等がこの王國の諸天に分れをる状《さま》は、王(我等の思ひを己が思ひに配《そ》はしむる)の心に適《かな》ふ如く全王國の心に適ふ 八二―八四
聖意《みこゝろ》はすなはちわれらの平和、その生み出だし自然の造る凡ての物の流れそゝぐ海ぞかし。 八五―八七
天のいづこも天堂にて、たゞかしこに至上の善の恩惠《めぐみ》の一樣に降《ふ》らざるのみなること是時我に明らかなりき 八八―九〇
されど人もし一の食物《くひもの》に飽き、なほ他に望む食物あれば、此を求めてしかして彼のために謝す 九一―九三
我も姿、詞《ことば》によりてまたかくの如くになしぬ、こは彼がいかなる機《はた》を織るにあたりて杼《ひ》を終りまで引かざりしやを彼より聞かんとてなりき 九四―九六
彼我に曰《い》ふ。完き生涯と勝《すぐ》るゝ徳とはひとりの淑女をさらに高き天に擧ぐ、その法《のり》に從ひて衣を着《き》面※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]《かほおほひ》を付《つく》る者汝等の世にあり 九七―九九
彼等はかくしてかの新郎《はなむこ》、即ち愛より出るによりて己が心に適《かな》ふ誓ひをすべてうけいるゝ者と死に至るまで起臥《おきふし》を倶《とも》にせんとす 一〇〇―一〇二
かの淑女に從はんため我若うして世を遁《のが》れ、身に彼の衣を纏《まと》ひ、またわが誓ひをその派の道に結びたり 一〇三―一〇五
その後、善よりも惡に親しむ人々、かのうるはしき僧院より我を引放しにき、神知り給ふ、わが生涯のこの後いかになりしやを 一〇六―一〇八
またわが右にて汝に現はれ、われらの天のすべての光にもやさるゝこの一の輝《かゞやき》は 一〇九―一一一
わが身の上の物語を己が身の上の事と知る、彼も尼なりき、また同じさまにてその頭《かうべ》より聖なる首※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]《かしらぎぬ》の陰《かげ》を奪はる 一一二―一一四
されど己が願ひに背《そむ》きまた良《よ》き習《ならはし》に背きてげに世に還《かへ》れる後にも、未だ嘗《かつ》て心の面※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]《かほおほひ》を釋《と》くことなかりき 一一五―一一七
こはソアーヴェの第二の風によりて第三の風即ち最後の威力《ちから》を生みたるかの大いなるコスタンツァの光なり。 一一八―一二〇
かく我に語りて後、かれはアーヴェ・マリーアを歌ひいで、さてうたひつゝ、深き水に重き物の沈む如く消失《きえう》せき 一二一―一二三
見ゆるかぎり彼のあとを追ひしわが目は、これを見るをえざるに及び、さらに大いなる願ひの目的《めあて》にかへり來りて 一二四―一二六
全くベアトリーチェにそゝげり、されど淑女いとつよくわが目に煌《きら》めき、視力《みるちから》はじめこれに耐《た》へざりしかば 一二七―一二九
わが問これがために後《おく》れぬ。 一三〇―一三二
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   第四曲

等《ひと》しく隔《へだた》り等しく誘《いざな》ふ二の食物《くひもの》の間にては、自由の人、その一をも齒に觸れざるさきに饑《う》ゑて死すべし 一―三
かくの如く、二匹の猛《たけ》き狼の慾と慾との間にては一匹の羔《こひつじ》
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