然と偶然とが必然を造ることありや否《いな》やを知らん爲にも 九七―九九
第一の動《うごき》の有無《うむ》を知らん爲にも、はたまた一の直角なき三角形が半圓の内に造らるゝをうるや否やを知らん爲にもあらざりしを 一〇〇―一〇二
是故に汝もしさきにわがいへることゝ此事とを思ひみなば、わが謂《い》ふところの比類《たぐひ》なき智とは王者の深慮《ふかきおもんばかり》を指すをみむ 一〇三―一〇五
またもし明らかなる目を興りしといふ語《ことば》にむけなば、こは數多くして良者《よきもの》稀《まれ》なる王達にのみ關《かゝ》はるをみむ 一〇六―一〇八
かく別《わか》ちてわが言《ことば》を受けよ、さらばそは第一の父及びわれらの愛する者についての汝の信仰と並び立つべし 一〇九―一一一
汝この事をもて常に足の鉛とし、汝の見ざる然《しか》と否《いな》とにむかひては疲れし人の如く徐《しづか》に進め 一一二―一一四
肯《うべな》ふべき時にてもまたいなむべき時にても、彼と此とを別たずしてしかする者はいみじき愚者にほかならず 一一五―一一七
そは輕々しく事を斷ずれば誤り易《やす》く、情また尋《つ》いで智を絆《ほだ》すにいたればなり 一一八―一二〇
眞理を漁《あさ》りて、技《わざ》を有せざる者は、その歸るや出立つ時と状《さま》を異にす、豈《あに》空《むな》しく岸を離れ去るのみならんや 一二一―一二三
パルメニーデ、メリッソ、ブリッソ、そのほか行きつゝ行方《ゆくへ》を知らざりし多くの人々みな世にむかひて明かにこれが證《あかし》をなす 一二四―一二六
サベルリオ、アルリオ及びあたかも劒の如く聖書を映《うつ》してその直《なほ》き顏を歪《ゆが》めし愚者また然《しか》り 一二七―一二九
されば人々餘りに安んじて事を判じ、さながら畑《はた》にある穗をばその熟せざるさきに評價《ねぶみ》する人の如くなるなかれ 一三〇―一三二
そはわれ茨《いばら》が、冬の間は堅《かた》く恐ろしく見ゆれども、後その梢《こずゑ》に薔薇《しやうび》の花をいたゞくを見 一三三―一三五
また船が直《なほ》く疾《と》く海を渡りて航路《ふなぢ》を終へつゝ、遂に港の入口に沈むを見しことあればなり 一三六―一三八
ドンナ・ベルタもセル・マルティーノも、一人《ひとり》盜み一人物を獻《さゝ》ぐるを見て、神の審判《さばき》かれらにあらはると思ふ勿《なか》れ 一三九
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