蕗Eの幸に向はず、常に眞の幸を求むる
迷ひなき天たありてさへ、われこの小《さゝや》かなる尊さに誇りを感じたれば、迷ひ多き世の人のこれに誇るも異しむ足らず
【衣】血統《ちすぢ》の尊さは美しき衣の如し、されど時なるもの鋏をもてたえずこの衣を斷ちこれを短うするが故に日に日に補ふにあらざれば身の飾りとなし難し(祖先の誇りも子孫の徳に補はれざれは永く保たじ)
一〇―一二
【ヴォイ】複數代名詞の voi(汝等)を單數代名詞 tu(汝)の代りに用ゐて敬意をあらはす。ローマ人がかく一人に對して複數代名詞を用ゐしことはまことは三世紀に始まれるなれど、かれらがカエサルに對してかゝる敬語を用ゐしをその濫觴とすとの説中古一般に信ぜられきといふ
前曲にてはダンテ、カッチアグイーダにむかひて tu の變化なる te(八五行)を用ゐたり。また『神曲』中ダンテがこの敬語(即ちヴォイ)を用ゐし例はブルネット・ラティーニ及びベアトリーチェに對せる場合に見ゆるのみ、但しこの語の變化を用ゐし例はその他にもあり
【その族の中にて】註釋者曰。他のイタリアの市民間にはこの複數の敬語今猶多く用ゐらるれどもローマの市民最も多く tu を用ふと
一三―一五
【ジネーヴラ】ギニヴァー(地、五・一二七以下參照)
【女】王妃ギニヴァーの侍女。ランスロットと王妃の戀を知り、咳《しはぶ》きしてこの咎を知れるを示せり。猶ダンテがその語《ことば》を改むるほど祖先に誇りを感ずるを見、世人共通の弱點に對してベアトリーチェの微笑せるに似たり
但し「最初の咎」の意明らかならず、ダンテが讀みたりと信ぜらるゝ『ランスロット物語』Lancelot du Lac によれば侍女の咳せしは王妃とランスロットとの睦言に對してなり(トインビー博士の『ダンテ考』Dante Studies and Researches にフランスの原文とその英譯と出づ)、されどダンテの記憶に誤りありきとも將又《はたまた》技巧の上より特に多少の變改を施せりとも解せられざるにあらざれは、從來の説に從つてかのふたりの間の接吻と見なすを妨げじ、パッセリーニ伯(一九一八年版註)は後記を採れり
一六―一八
【汝】原文には voi の語三たび出づ
一九―二一
【多くの流れにより】汝の言を聞き、さま/″\の原因により
【壞れず】人間の受くるをうる悦びには限りありて、その度を超ゆればかへつて
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