の愛する兄弟の、眞《まこと》の筆の録《しる》すごとく 六一―六三
信仰とは望まるゝ物の基見えざる物の證《あかし》なり、しかして是その本質と見ゆ。 六四―六六
是時聲曰ふ。汝の思ふ所正し、されど彼が何故にこれをまづ基の中に置き、後|證《あかし》の中に置きしやを汝よくさとるや否《いな》や。 六七―六九
我即ち。こゝにて我にあらはるゝもろ/\の奧深き事物も、全く下界の目にかくれ 七〇―七二
かしこにてはその在りとせらるゝことたゞ信によるのみ、人この信の上に高き望みを築くがゆゑに、この物即ち基に當る 七三―七五
また人|他《ほか》の物を見ず、たゞこの信によりて理《ことわ》らざるをえざるがゆゑに、この物即ち證《あかし》にあたる。 七六―七八
是時聲曰ふ。凡そ教へによりて世に知らるゝものみなかくの如く解《げ》せられんには、詭辯者の才かしこに容れられざるにいたらむ。 七九―八一
かくかの燃ゆる愛|言《ことば》に出《いだ》し、後加ふらく。この貨幣の混合物《まぜもの》とその重さとは汝既にいとよく檢《しら》べぬ 八二―八四
されどいへ、汝はこれを己が財布の中に有《も》つや。我即ち。然り、そを鑄《い》し樣《さま》に何の疑はしき事もなきまで光りて圓《まる》し。 八五―八七
この時、かしこに輝きゐたるかの光の奧より聲出でゝいふ。一切の徳の礎《いしずゑ》なるこの貴き珠は 八八―九〇
そも/\いづこより汝の許《もと》に來れるや。我。舊新二種の皮の上にゆたかに注ぐ聖靈の雨は 九一―九三
これが眞《まこと》を我に示しゝ論法にて、その鋭きに此《くら》ぶれば、いかなる證明も鈍《にぶ》しとみゆ。 九四―九六
聲|次《つい》で曰ふ。かく汝に論決せしむる舊新二つの命題を、汝が神の言《ことば》となすは何故ぞや。 九七―九九
我。この眞理を我に現はす所の證《あかし》が、ともなへる諸※[#二の字点、1−2−22]の業《わざ》(即ち自然がその爲|鐡《くろがね》を燒きまたは鐡床《かなしき》を打しことなき)なり 一〇〇―一〇二
聲我に答ふらく。いへ、これらの業の行はれしを汝に定かならしむるものは誰ぞや、他なし、自ら證《あかし》を求むる者ぞ汝にこれを誓ふなる。 一〇三―一〇五
我曰ふ。奇蹟なきに世キリストの教へに歸依《きえ》せば、是かへつて一の大いなる奇蹟にて、他の凡ての奇蹟はその百分《ぶ》一にも當らじ 一〇六―一〇八

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