ほまれ》の飾を失はず 一二七―一二九
習慣《ならはし》と自然これに特殊の力を與ふるがゆゑに、罪ある首《かしら》世を枉《ま》ぐれどもひとり直く歩みて邪《よこしま》の道をかろんず。 一三〇―一三二
彼。いざゆけ、牡羊《をひつじ》四の足をもて蔽ひ跨がる臥床《ふしど》の中に、日の七度《なゝたび》やすまざるまに 一三三―一三五
ねんごろなるこの意見《おもひ》は、人の言《ことば》よりも大いなる釘をもて汝の頭《かうべ》の正中《たゞなか》に釘付けらるべし 一三六―一三八
審判《さばき》の進路《ゆくて》支へられずば。 一三九―一四一
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   第九曲

年へしティトネの妾《そばめ》そのうるはしき友の腕《かひな》をはなれてはや東の臺《うてな》に白《しら》み 一―三
その額《ひたひ》は尾をもて人を撃つ冷やかなる生物《いきもの》に象《かたど》れる多くの珠《たま》に輝けり 四―六
また我等のゐたる處にては、夜はその昇《のぼり》の二歩を終へ、第三歩もはやその翼を下方に枉げたり 七―九
このとき我はアダモの讓《ゆづり》を受くるによりて睡りに勝たれ、我等|五者《いつたり》みな坐しゐたりし草の上に臥しぬ 一〇―一二
そのかみの憂ひを憶ひ起すなるべし可憐《いとほし》の燕朝近く悲しき歌をうたひいで 一三―一五
また我等の心、肉を離るゝこと遠く思にとらはるゝこと少なくして、その夢あたかも神《しん》に通ずるごとくなる時
我は夢に、黄金《こがね》の羽ある一羽の鷲の、翼をひらきて空《そら》に懸《かゝ》り、降らんとするをみきとおぼえぬ 一九―二一
また我はガニメーデが攫《さら》はれて神集《かんづとひ》にゆき、その侶《とも》あとに殘されしところにゐたりとおぼえぬ 二二―二四
我ひそかに思へらく、この鳥恐らくはその習ひによりて餌をこゝにのみ求むるならむ、恐らくはこれを他《ほか》の處に得て持《もち》て舞上《まひのぼ》るを卑しむならむと 二五―二七
さてしばらく※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《めぐ》りて後、このもの電光《いなづま》のごとく恐ろしく下り來りて我をとらへ、火にいたるまで昇るに似たりき 二八―三〇
鳥も我もかの處にて燃ゆとみえたり、しかして夢の中なる火燒くことはげしかりければわが睡りおのづから破れぬ 三一―三三
かのアキルレが、目覺めてそのあたりを見、何處《いづこ》にあるやをしらずして身をゆるがせしさまといふとも 三四―三六
(こはその母これをキロネより奪ひ、己が腕《かひな》にねむれる間にシロに移せし時の事なり、その後かのギリシア人《びと》これにかしこを離れしむ) 三七―三九
睡《ねむり》顏より逃《に》げしときわがうちふるひしさまに異ならじ、我はあたかも怖れのため氷に變る人の如くに色あをざめぬ 四〇―四二
わが傍には我を慰むる者のみゐたり、日は今高きこと二時《ふたとき》にあまれり、またわが顏は海のかたにむかひゐたりき 四三―四五
わが主曰ふ。おそるゝなかれ、心を固うせよ、よき時來りたればなり、汝の力をみなあらはして抑《おさ》ふるなかれ 四六―四八
汝は今淨火に着けり、その周邊《まはり》をかこむ岩をみよ、岩分るゝとみゆる處にその入口あるをみよ 四九―五一
今より暫《しば》し前《さき》、晝にさきだつ黎明《あけぼの》の頃、汝の魂かの溪を飾る花の上にて汝の中に眠りゐたるとき 五二―五四
ひとりの淑女來りて曰ふ、我はルーチアなり、我にこの眠れる者を齎らすを許せ、我斯くしてその路を易からしめんと 五五―五七
ソルデルとほかの貴き魂は殘れり、淑女汝を携へて日の出づるとともに登り來り、我はその歩履《あゆみ》に從へり 五八―六〇
彼汝をこゝに置きたり、その美しき目はまづ我にかの開きたる入口を示せり、しかして後彼も睡りもともに去りにき。 六一―六三
眞《まこと》あらはるゝに及び、疑ひ解けて心やすんじ、恐れを慰めに變ふる人のごとく 六四―六六
我は變りぬ、わが思ひわづらふことなきをみしとき、導者岩に沿ひて登り、我もつづいて高處《たかみ》にむかへり 六七―六九
讀者よ、汝よくわが詩材のいかに高くなれるやを知る、されば我さらに多くの技《わざ》をもてこれを支へ固むるともあやしむなかれ 七〇―七二
我等近づき、一の場所にいたれるとき、さきにわが目に壁を分つ罅《われめ》に似たる一の隙《ひま》ありとみえしところに 七三―七五
我は一の門と門にいたらんためその下に設けし色異なれる三の段《きだ》と未だ物言はざりしひとりの門守《かどもり》を見たり 七六―七八
またわが目いよ/\かなたを望むをうるに從ひ、我は彼が最高き段《きだ》の上に坐せるをみたり、されどその顏をばわれみるに堪へざりき 七九―八一
彼手に一の白刃《しらは》を持てり、この物光を映《うつ》してつよく我等の方に輝き、我屡※[#
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