ながら嵐の中なる船の、浪にゆすられ、忽ち右舷忽ち左舷に傾くに似たりき 一一五―一一七
我また見しにすべての良き食物《くひもの》に饑うとみゆる一匹の牝狐かの凱旋車の車内にかけいりぬ 一一八―一二〇
されどわが淑女はその穢《けがら》はしき罪を責めてこれを逐ひ、肉なき骨のこれに許すかぎりわしらしむ 一二一―一二三
我また見しにかの鷲はじめのごとく舞下りて車の匣《はこ》の内に入り己が羽をかしこに散《ちら》して飛去りぬ 一二四―一二六
この時なやめる心よりいづるごとき聲天よりいでていひけるは。ああわが小舟《をぶね》よ、汝の積める荷はいかにあしきかな。 一二七―一二九
次にはわれ輪と輪の間の地ひらくがごときをおぼえ、またその中より一の龍のいで來るをみたり、この者尾をあげて輦《くるま》を刺し 一三〇―一三二
やがて螫《はり》を收むる蜂のごとくその魔性の尾を引縮め車底の一部を引出《ひきいだ》して紆曲《うね》りつつ去りゆけり 一三三―一三五
殘れる物は肥えたる土の草におけるがごとく羽(おそらくは健全《すこやか》にして厚き志よりさゝげられたる)に 一三六―一三八
おほはれ、左右の輪及び轅《ながえ》もまたたゞちに――その早きこと一の歎息《ためいき》の口を開く間にまされり――これにおほはる 一三九―一四一
さてかく變りて後この聖なる建物《たてもの》その處々《ところ/″\》より頭を出せり、即ち轅よりは三、稜《かど》よりはみな一を出せり 一四二―一四四
前の三には牡牛のごとき角あれども後の四には額に一の角あるのみ、げにかく寄《くす》しき物かつてあらはれし例《ためし》なし 一四五―一四七
その上には高山《たかやま》の上の城のごとく安らかに坐し、しきりにあたりをみまはしゐたるひとりのしまりなき遊女《あそびめ》ありき 一四八―一五〇
我また見しにあたかもかの女の奪ひ去らるゝを防ぐがごとく、ひとりの巨人その傍に立ちてしば/\これと接吻《くちづけ》したり 一五一―一五三
されど女がその定まらずみだりなる目を我にむくるや、かの心猛き馴染《なじみ》頭より足にいたるまでこれを策《むちう》ち 一五四―一五六
かくて嫉みと怒りにたへかね、異形《いぎやう》の物を釋き放ちて林の奧に曳入るれば、たゞこの林|盾《たて》となりて 一五七―一五九
遊女《あそびめ》も奇《くす》しき獸も見えざりき 一六〇―一六二
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