ほか》の幸の額にいかなる慰《なぐさめ》または益のあらはれて汝その前をはなれがたきにいたれるや。 二八―三〇
一のくるしき大息《といき》の後、我にほとんど答ふる聲なく、唇からうじてこれをつくれり 三一―三三
我泣きて曰ふ。汝の顏のかくるゝや、眼前《めのまへ》に在る物その僞りの快樂《けらく》をもてわが歩履《あゆみ》を曲げしなり 三四―三六
彼。汝たとひ默《もだ》しまたは今の汝の懺悔をいなみきとすとも汝の愆《とが》何ぞかくれ易からん、かのごとき士師《さばきづかさ》知りたまふ 三七―三九
されど罪を責むる言《ことば》犯せる者の口よりいづれば、我等の法廷《しらす》にて、輪はさかさまに刃《は》にむかひてめぐる 四〇―四二
しかはあれ汝今己が過ちを恥ぢ、この後シレーネの聲を聞くとも心を固うするをえんため 四三―四五
涙の種を棄てて耳をかたむけ、葬られたるわが肉の汝を異なる方にむかしむべかりし次第を聞くべし 四六―四八
さきに我を包みいま地にちらばる美しき身のごとく汝を喜ばせしものは、自然も技《わざ》も嘗て汝にあらはせることあらざりき 四九―五一
わが死によりてこのこよなき喜び汝に缺けしならんには、そも/\世のいかなる物ぞその後汝の心を牽《ひ》きてこれを求むるにいたらしめしは 五二―五四
げに汝は假初《かりそめ》の物の第一の矢のため、はやかゝる物ならざりし我に從ひて立昇るべく 五五―五七
稚《をさな》き女そのほか空しきはかなきものの矢を待ちて翼をひくく地に低るべきにあらざりき 五八―六〇
それ二の矢三の矢を待つは若き小鳥の事ぞかし、羽あるものの目のまへにて網を張り弓を彎《ひ》くは徒爾《いたづら》なり。 六一―六三
我はあたかもはぢて言なく、目を地にそゝぎ耳を傾けて立ち、己が過ちをさとりて悔ゆる童《わらべ》のごとく 六四―六六
立ちゐたり、彼曰ふ。汝聞きて憂ふるか、鬚を上げよ、さらば見ていよ/\憂へむ。 六七―六九
たくましき樫の木の、本土《ところ》の風またはヤルバの國より吹く風に拔き倒さるゝ時といふとも、そのこれにさからふこと 七〇―七二
わが彼の命をきゝて頤《おとがひ》をあげしときに及ばじ、彼顏といはずして鬚といへるとき、我よくその詞の毒を認めぬ 七三―七五
我わが顏をあげしとき、わが目は、かのはじめて造られし者等が、ふりかくることをやめしをさとり 七六―七八
また(わが目なほ定
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