對《うら》なり、こゝを立去りてまた我に累をなすなかれ、かく諂《へつら》ふともこの窪地《くぼち》に何の益あらんや 九四―九六
この時我その項《うなじ》の毛をとらへ曰ひけるは、いまはのがるゝに途なし、若し名をいはずば汝の髮一筋をだにこゝに殘さじ 九七―九九
彼聞きて曰ふ、汝たとひわが髮を※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]《むし》るとも我の誰なるやを告げじ、また千度《ちたび》わが頭上《づじやう》に落來るともあらはさじ 一〇〇―一〇二
我ははやくも髮を手に捲き、これを拔くこと一房より多きにおよび、彼は吠えつゝたえずその目を垂れゐたるに 一〇三―一〇五
ひとり叫びていひけるは、ボッカよ何をかなせる、※[#「鰐」の「魚」に代えて「月」、第3水準1−90−51]《あぎと》を鳴らすもなほ足らずとて吠ゆるか、汝に觸《さは》るは何の鬼ぞや 一〇六―一〇八
我曰ふ、恩に背きし曲者奴《くせものめ》、いまは汝に聞くの用なし、我汝の眞《まこと》の消息《おとづれ》を携へゆきこれを汝の恥となさん 一〇九―一一一
彼答へて曰ふ、往け、しかして思ひのまゝにかたれ、されど汝この中よりいでなば、いまかく口を輕くせ
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