にこゝにありしが其後一|度《たび》も身を動かすことなかりき、思ふに何時《いつ》に至るとも然《しか》せじ 九四―九六
ひとりはジユセッポを讒《しこづ》りし僞りの女、一はトロイアにありしギリシア人《びと》僞りのシノンなり、彼等劇しき熱の爲に臭き烟を出すことかく夥《おびたゞ》し 九七―九九
この時そのひとり、かくあしざまに名をいはれしを怨めるなるべし、拳《こぶし》をあげて彼の硬き腹を打ちしに 一〇〇―一〇二
その音恰も太鼓の如くなりき、マエストロ・アダモはかたさこれにも劣らじとみゆるおのが腕をもてかの者の顏を打ち 一〇三―一〇五
これにいひけるは、たとひこの身重くして動くあたはずともかゝる用《もちゐ》にむかひては自在の肱《かひな》我にあり 一〇六―一〇八
かの者即ち答へて曰ふ、火に行ける時汝の腕かくはやからず、貨幣《かね》を造るにあたりてはかく早く否これよりも早かりき 一〇九―一一一
水氣を病める者、汝のいへるは眞《まこと》なり、されどトロイアにて眞を問はれし時汝はかかる眞の證人《あかしびと》にあらざりき 一一二―一一四
シノネ曰ふ、我は言《ことば》にて欺けるも汝は貨幣《かね》にて欺けるなり
前へ 次へ
全374ページ中168ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ダンテ アリギエリ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング