處なるチェペラン 一三―
およびターリアコッツォのあたり、乃ち老いたるアーラルドが素手《すで》にて勝利《かち》をえしところにいまなほ骨を積重ぬる者之に加はり ―一八
ひとりは刺されし身ひとりは斷たれし身をみすとも、第九の嚢《ボルジヤ》の汚らはしきさまには較《くら》ぶべくもあらぬなるべし 一九―二一
我見しにひとり頤《おとがひ》より人の放屁する處までたちわられし者ありき、中板《なかいた》または端板《はしいた》を失へる樽のやぶれもげにこれに及ばじ 二二―二四
腸《はらわた》は二の脛《はぎ》の間に垂れ、また内臟と呑みたるものを糞《ふん》となす汚《きたな》き嚢《ふくろ》はあらはれき 二五―二七
我は彼を見んとてわが全心を注ぎゐたるに、彼我を見て手をもて胸をひらき、いひけるは、いざわが裂かれしさまをみよ 二八―三〇
マオメットの斬りくだかれしさまをみよ、頤《おとがひ》より額髮まで顏を斬られて歎きつゝ我にさきだちゆくはアーリなり 三一―三三
そのほか汝のこゝにみる者はみな生ける時不和分離の種を蒔けるものなり、この故にかく截らる 三四―三六
後方《うしろ》に一の鬼ありて、我等憂ひの路をめぐりはつればこの群の中なるものを再び悉く劒の刃《は》にかけ 三七―
かく酷《むご》く我等を裝《よそふ》ふ、我等再びその前を過ぐるまでには傷すべてふさがればなり ―四二
されど汝は誰なりや、石橋の上よりながむるはおもふに汝の自白によりて定められたる罰に就くを延べんためならん 四三―四五
わが師答ふらく、死未だ彼に臨まず、また罪彼を苛責に導くにあらず、たゞその知ること周《あまね》きをえんため 四六―四八
死せる我彼を導いて地獄を過ぎ、圈また圈をつたひてこゝに下るにいたれるなり、この事の眞《まこと》なるはわが汝に物言ふことの眞なるに同じ 四九―五一
此言を聞ける時、あやしみのあまり苛責をわすれ、我を見んとて濠の中に止まれる者その數《かず》百を超えたり 五二―五四
さらば汝ほどなく日を見ることをうべきに、フラー・ドルチンに告げて、彼もしいそぎ我を追ひてこゝに來るをねがはずば 五五―
雪の圍《かこみ》が、たやすく得べきにあらざる勝利《かち》をノヴァーラ人に與ふるなからんため糧食《かて》を身の固《かため》となせといへ ―六〇
すでにゆかんとしてその隻脚《かたあし》をあげし後、マオメットかく我に曰ひ、さて去らんとてこれを地に伸ぶ 六一―六三
またひとり喉を貫かれ、鼻を眉の下まで削《そ》かれ、また耳をたゞ一のみ殘せるもの 六四―六六
衆と共にあやしみとゞまりてうちまもりゐたりしが、その外部《そと》ことごとく紅なる喉吭《のどぶえ》を人よりさきにひらきて 六七―六九
いひけるは、罪ありて罰をうくるにあらず、また近似《により》の我を欺くにあらずば上《うへ》なるラチオの國にてかつて見しことある者よ 七〇―七二
汝歸りてヴェルチェルリよりマールカーボに垂るゝ麗しき野を見るをえば、ピエール・ダ・メディチーナの事を忘れず 七三―七五
ファーノの中のいと善き二人《ふたり》メッセル・グイードならびにアンジオレルロに、我等こゝにて先を見ること徒《いたづら》ならずば 七六―
ひとりの殘忍非道の君信を賣るをもて彼等その船より投げられ、ラ・カットリーカに近く沈めらるべしと知らしめよ ―八一
チープリとマイオリカの二の島の間に、海賊によりても希臘人《アルゴスびと》によりてもかゝる大罪の行はるゝをネッツーノだに未だ見ず 八二―八四
かの一をもて物を見、かつわが同囚《なかま》のひとりにみざりしならばよかりしをとおもはしむる邑《まち》の君なる信なき者 八五―八七
詢《はか》ることありとて彼等を招き、かくしてフォカーラの風のためなる誓ひも祈りも彼等に用なきにいたらしむべし 八八―九〇
我彼に、わが汝の消息《おとづれ》を上《うへ》に齎らすをねがはゞ、見しことを痛みとするは誰なりや我に示しかつ告げよ 九一―九三
この時彼手を同囚《なかま》のひとりの※[#「鰐」の「魚」に代えて「月」、第3水準1−90−51]《あぎと》にかけて口をあけしめ、叫びて、これなり、物いはず 九四―九六
彼は逐はれて後チェーザレに説き、人|備《そなへ》成りてなほためらはゞ必ず損害《そこなひ》をうくといひてその疑ひを鎭めしことありきといふ 九七―九九
かく臆することなく物言ひしクーリオも舌を喉吭《のどぶえ》より切放たれ、その驚き怖るゝさまげにいかにぞや 一〇〇―一〇二
こゝにひとり手を二《ふたつ》ともに斷たれしもの、殘りの腕を暗闇のさにさゝげて顏を血に汚し 一〇三―一〇五
さけびていふ、汝また幸なくも事行はれて輙ち成るといへるモスカをおもへ、わがかくいへるはトスカーナの民の禍ひの種なりき 一〇六―一〇八
この時我は詞を添へて、また、汝の宗族《
前へ
次へ
全94ページ中39ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ダンテ アリギエリ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング