上にはいで難し、かしこに砂原より立登る新しき烟みゆ 一一五―一一七
こはわが共にあることをえざる民來れるなり、我わがテゾーロによりて生く、ねがはくは之を汝に薦めん、また他を請はず 一一八―一二〇
かくいひて身をめぐらし、あたかも緑の衣をえんとてヴェロナの廣野《ひろの》を走るものゝ如く、またその中にても 一二一―一二三
負くる者ならで勝つ者の如くみえたりき 一二四―一二六
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   第十六曲

我は既に次の獄《ひとや》に落つる水の響きあたかも蜂※[#「穴/果」、第3水準1−89−51]《はちのす》の鳴る如く聞ゆるところにいたれるに 一―三
この時|三《みつ》の魂ありてはしりつゝ、はげしき苛責の雨にうたれて過ぎゆく群を齊しくはなれ 四―六
我等の方にむかひて來り、各※[#二の字点、1−2−22]叫びていひけるは、止まれ、衣によりてはかるに汝は我等の邪《よこしま》なる邑《まち》の者なるべし 七―九
あはれ彼等の身にみゆるは何等の傷ぞや、みな焔に燒かれしものにて新しきあり、古きあり、そのさま出づればいまなほ苦し 一〇―一二
我師彼等のよばゝる聲に心をとめ顏をわが方にむけていひけるは、待て、彼等は人の敬ひをうくべきものなり 一三―一五
さればもし處の性《さが》の火を射るなくば我は急《いそぎ》は彼等よりもかへつて汝にふさはしといふべし 一六―一八
我等止まれるに彼等は再び古歌をうたひ、斯くて我等に近づける時|三者《みたり》あひ寄りて一の輪をつくれり 一九―二一
裸なる身に膏《あぶら》うちぬり將に互に攻め撲たんとしてまづおさゆべき機會《すき》をうかゞふ勇士の如く 二二―二四
彼等もまためぐりつゝ各※[#二の字点、1−2−22]目を我にそゝぎ、頸はたえず足と異なる方にむかひて動けり 二五―二七
そのひとりいふ、この軟かき處の幸なさ、黯《くろず》み爛れし我等の姿、たとひ我等と我等の請ひとに侮りを招く事はありとも 二八―三〇
願はくは我等の名汝の意《こゝろ》を枉げ、生くる足にてかく安らかに地獄を擦《す》りゆく汝の誰なるやを我等に告げしめんことを 三一―三三
見らるゝ如く足跡を我に踏ましむるこのひとりは裸にて毛なしといへども汝の思ふよりは尚|際《きは》貴《たか》き者なりき 三四―三六
こは善きグアルドラーダの孫にて名をグイード・グエルラといひ、その世にあるや智と劒をもて多く
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