等を見、また老いたる縫物師《ぬひものし》の針眼《はりのめ》にむかふごとく目を鋭くして我等にむかへり ―二一
かゝる族《やから》にかくうちまもられ我はそのひとりにさとられき、彼わが裾をとらへ叫びて何等の不思議ぞといふ 二二―二四
彼その腕《かひな》を我にむかひてのべし時、われ目を燒けし姿にとむるに、顏のたゞれもなほわが智《さとり》を妨げて 二五―
彼を忘れしむるにはたらざりき、われわが顏を彼の顏のあたりに低れて、セル・ブルネットよ、こゝにゐ給ふやと答ふ ―三〇
彼、わが子よ、ねがはくはブルネット・ラティーニしばらく汝と共にあとにかへりてこの群《むれ》をさきに行かしめん 三一―三三
我彼にいふ、これわが最も希ふところなり、汝またわが汝と共に坐《すわ》らん事を願ひその事彼の心に適はゞしかすべし、我彼と共に行けばなり 三四―三六
彼曰ふ、あゝ子よ、この群の中|縱《たと》ひ束の間なりとも止まる者あればその者そののち身を横たゆる百年《もゝとせ》に及び火これを撃つとも扇ぐによしなし 三七―三九
されば行け、我は汝の衣につきてゆき、永劫の罰を歎きつゝゆくわが伴侶《なかま》にほどへて再び加はるべし 四〇―四二
我は路をくだり彼とならびてゆくを得ず、たゞうや/\しく歩む人の如くたえずわが頭《かうべ》を低れぬ 四三―四五
彼曰ふ、終焉《をはり》の日未だ至らざるに汝をこゝに導くは何の運何の定《ぢやう》ぞや、また道を教ふるこの者は誰ぞや 四六―四八
我答へて彼に曰ふ、明《あか》き上の世に、わが齡未だ滿たざるに、我一の溪の中に迷へり 四九―五一
わが背《そびら》を之にむけしはたゞ昨日《きのふ》の朝の事なり、この者かしこに戻らんとする我にあらはれ、かくてこの路により我を導いて我家《わがや》に歸らしむ 五二―五四
彼我に、美しき世にてわが量れること違はずば汝おのが星に從はんに榮光の湊を失ふあたはず 五五―五七
またわが死かく早からざりせば天かく汝に福《さいはひ》するをみて我は汝の爲すところをはげませしなるべし 五八―六〇
されど古《いにしへ》、フィエソレを下りいまなほ山と岩とを含める恩を忘れしさがなき人々 六一―六三
汝の善き行ひの爲に却つて汝の仇とならむ、是亦宜なり、そは酸きソルボに混《まじ》りて甘き無花果の實を結ぶは適《ふさ》はしき事に非ざればなり 六四―六六
彼等は世の古き名によりて盲《めし
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