場《かぢば》に 五五―
殘りの鍛工等をかはる/″\疲らせ、死力を盡して我を射るとも、心ゆくべき復讎はとげがたし ―六〇
この時わが導者聲を勵まして(かく高らかに物言へるを我未だ聞きしことなかりき)いひけるは、カパーネオよ、汝の罰のいよ/\重きは汝の慢心の盡きざるにあり、汝の劇しき怒りのほかはいかなる苛責の苦しみも汝の怒りにふさはしき痛みにあらじ 六一―六六
かくいひて顏を和らげ、我にむかひていひけるは、こはテーベを圍める七王の一《ひとり》にて神を侮れる者なりき 六七―
いまも神を侮りて崇《あが》むることなしとみゆ、されどわが彼にいへる如く彼の嘲りはいとにつかしきその胸の飾なり ―七二
いざ我に從へ、またこの後愼みて足を熱砂に觸れしむることなく、たえず森に沿ひて歩むべし 七三―七五
我等また語らず、さゝやかなる一の小川の林の中より迸る處にいたれり、その赤きこといまもわが身を震へしむ 七六―七八
さながらブリカーメより細き流れ(罪ある女等ほどへてこれをわけもちふ)の出づる如く、この川砂を貫いて下り 七九―八一
その水底《みなそこ》、傾ける兩岸、縁《ふち》はみな石と成れり、此故に我こゝに行手の路あるを知りき 八二―八四
閾を人のこゆるに任《まか》す門より内に入りしこのかた、凡てわが汝に示せるものゝうちすべての焔をその上に消すこの流れの如くいちじるしきは汝の目未だ見ず 八五―八七
これわが導者の言なりき、我乃ち彼に請ひ、慾を我に惜しまざりし彼の、食をも惜しむなからんことを求めぬ 九一―九三
この時彼曰ふ、海の正中《たゞなか》に荒れたる國あり、クレータと名づく、こゝの王の治世の下《もと》、世はそのかみ清かりき 九四―九六
かしこにそのかみ水と木葉《このは》の幸《さち》ありし山あり、イーダと呼ばる、今は荒廢《あれすた》れていと舊《ふ》りたるものゝごとし 九七―九九
そのかみレーアこれをえらびてその子の恃《たのみ》の搖籃となし、その泣く時特に善くかくさんためかしこに叫びあらしめき 一〇〇―一〇二
この山の中には一人《ひとり》の老巨人の直立するあり、背をダーミアータにむけ、ローマを見ること己が鏡にむかふに似たり 一〇三―一〇五
その頭は純金より成り、腕と胸とは純銀なり、そこより跨《また》にいたるまでは銅 一〇六―一〇八
またその下はすべて精鐡なれどもたゞ右足のみは燒土にてしかも彼の
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