一二七―一二九
我彼に、詩人よ、汝のしらざりし神によりてわれ汝に請ふ、この禍ひとこれより大なる禍ひとを免かれんため 一三〇―一三二
ねがはくは我を今汝の告げし處に導き、聖ピエートロの門と汝謂ふ所の幸《さち》なき者等をみるをえしめよ 一三三―一三五
この時彼進み、我はその後方《うしろ》に從へり 一三六―一三八
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   第二曲

日は傾けり、仄闇《ほのくら》き空は地上の生物をその勞苦より釋けり、たゞ我ひとり 一―三
心をさだめて路と憂ひの攻めにあたらんとす、誤らざる記憶はこゝにこれを寫さむ 四―六
あゝムーゼよ、高き才よ、いざ我をたすけよ、わがみしことを刻める記憶よ、汝の徳はこゝにあらはるべし 七―九
我いふ、我を導く詩人よ、我を難路に委ぬるにあたりてまづわが力のたるや否やを思へ 一〇―一二
汝いへらく、シルヴィオの父は朽つべくして朽ちざるの世にゆき、肉體のまゝにてかしこにありきと 一三―一五
されど彼より出づるにいたれる偉業をおもひ、彼の誰たり何たるをおもはゞ、衆惡の敵《あた》のめぐみ深かりしとも 一六―一八
識者見て分に過ぎたりとはなさじ、そは彼エムピレオの天にて選ばれて尊きローマ及びその帝國の父となりたればなり 一九―二一
かれもこれもげにともに定めに從ひて聖地となり、大ピエロの後を承くる者位に坐してこゝにあり 二二―二四
彼かしこにゆき(汝これによりてかれに名をえしむ)勝利《かち》と法衣《ころも》の本となれる多くの事を聞きえたり 二五―二七
その後|選《えらび》の器《うつは》、救ひの道の始めなる信仰の勵《はげみ》を携へかへらんためまたかしこにゆけることあり 二八―三〇
されど我は何故に彼處《かしこ》にゆかむ誰か之を我に許せる、我エーネアに非ず我パウロに非ず、わがこの事に堪ふべしとは我人倶に信ぜざるなり 三一―三三
されば我若し行くを肯はゞその行くこと恐らくはこれ狂へるわざならん、汝は賢《さか》し、よくわが言《ことば》の盡さゞるところをさとる 三四―三六
人その願ひを飜し、新なる想《おもひ》によりて志を變へ、いまだ始めにあたりてそのなすところをすべて抛つことあり 三七―三九
我も暗き山路《やまぢ》にありてまたかくのごとくなりき、そはわが思ひめぐらしてかくかろがろしく懷けるわが企圖《くはだて》を棄てたればなり 四〇―四二
心おほいなる者の魂答へて曰ひ
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