あか》し 三七―三九
眞《まこと》の作者、即ち己が事を語りて我汝に一切の徳を見すべしとモイゼにいへる者の聲これを明し 四〇―四二
汝も亦、かの尊き公布《ふれ》により、他《ほか》のすべての告示《しらせ》にまさりて、こゝの秘密を下界に徇《とな》へつゝ、我にこれを明すなり。 四三―四五
是時聲曰ふ。人智及びこれと相和する權威によりて、汝の愛のうちの最《いと》大いなるもの神にむかふ 四六―四八
されど汝は、神の方《かた》に汝を引寄する綱のこの外《ほか》にもあるを覺ゆるや、請ふ更にこれを告げこの愛が幾個《いくつ》の齒にて汝を噛むやを言現《いひあら》はすべし。 四九―五一
クリストの鷲の聖なる思ひ隱れざりき、否《いな》我はよく彼のわが告白をばいづこに導かんとせしやを知りて 五二―五四
即ちまたいひけるは。齒をもて心を神に向はしむるをうるもの、みなわが愛と結び合へり 五五―五七
そは宇宙の存在、我の存在、我を活かしめんとて彼の受けし死、及び凡そ信ずる人の我と等しく望むものは 五八―六〇
先に述べし生くる認識とともに、我を悖《もと》れる愛の海より引きて、正しき愛の岸に置きたればなり 六一―六三
永遠《とこしへ》の園丁《にはつくり》の園にあまねく茂る葉を、我は神がかれらに授け給ふ幸《さいはひ》の度に從ひて愛す。 六四―六六
我|默《もだ》しゝとき、忽ち一のいとうるはしき歌天に響き、わが淑女全衆に和して、聖なり聖なり聖なりといへり 六七―六九
鋭き光にあへば、物視る靈が、膜より膜に進み入るその輝に馳せ向ふため、眠り覺まされ 七〇―七二
覺めたる人は、判ずる力己を助くるにいたるまで、己が俄にさめし次第を知らで、その視る物におびゆるごとく 七三―七五
ベアトリーチェは、千|哩《ミーリア》の先をも照らす己が目の光をもて、一切の埃《ほこり》をわが目より拂ひ 七六―七八
我は是時前よりもよく見るをえて、第四の光のわれらとともにあるを知り、いたく驚きてこれが事を問へり 七九―八一
わが淑女。この光の中には、第一の力のはじめて造れる第一の魂その造主《つくりぬし》を慕ふ。 八二―八四
たとへば風過ぐるとき、枝はその尖《さき》を垂《た》るれど、己が力に擡《もた》げられて、後また己を高むるごとく 八五―八七
我は彼の語れる間、いたく異《あや》しみて頭《かうべ》を低《た》れしも、語るの願ひに燃されて、後再び心を強うし 八八―九〇
曰ひけるは。あゝ熟して結べる唯一《たゞひとつ》の果實《このみ》よ、あゝ新婦《はなよめ》といふ新婦を女《むすめ》子婦《よめ》に有《も》つ昔の父よ 九一―九三
我いとうや/\しく汝に祈《ね》ぐ、請ふ語れ、わが願ひは汝の知るところなれば、汝の言《ことば》を疾《と》く聞かんため、我いはじ。 九四―九六
獸包まれて身を搖動《ゆりうごか》し、包む物またこれとともに動くがゆゑに、願ひを現はさゞるををえざることあり 九七―九九
かくの如く、第一の魂は、いかに悦びつゝわが望みに添はんとせしやを、その蔽物《おほひ》によりて我に示しき 一〇〇―一〇二
かくていふ。汝我に言現はさずとも、わが汝の願ひを知ること、およそ汝にいと明らかなることを汝の知るにもまさる 一〇三―一〇五
こは我これを眞《まこと》の鏡――この鏡萬物を己に映《うつ》せど、一物としてこれを己に映《うつ》すはなし――に照して見るによりてなり 一〇六―一〇八
汝の聞かんと欲するは、この淑女がかく長き階《きぎはし》をば汝に昇るをえしめし處なる高き園の中に神の我を置給ひしは幾年前《いくとせさき》なりしやといふ事 一〇九―一一一
これがいつまでわが目の樂なりしやといふ事、大いなる憤《いきどほり》の眞《まこと》の原因《もと》、またわが用ゐわが作れる言葉の事即ち是なり 一一二―一一四
さて我子よ、かの大いなる流刑《るけい》の原因《もと》は、木實《このみ》を味《あぢは》へるその事ならで、たゞ分を超《こ》えたることなり 一一五―一一七
我は汝の淑女がヴィルジリオを出立《いでた》ゝしめし處にありて、四千三百二年の間この集會《つどひ》を慕ひたり 一一八―一二〇
また地に住みし間に、我は日が九百三十回、その道にあたるすべての光に歸るを見たり 一二一―一二三
わが用ゐし言葉は、ネムブロットの族《やから》がかの成し終へ難き業《わざ》を試みしその時よりも久しき以前《さき》に悉く絶えにき 一二四―一二六
そは人の好む所天にともなひて改まるがゆゑに、理性より生じてしかして永遠《とこしへ》に續くべきもの未だ一つだにありしことなければなり 一二七―一二九
抑※[#二の字点、1−2−22]《そも/\》人の物言ふは自然の業《わざ》なり、されどかく言ひかくいふことは自然これを汝等に委《ゆだ》ね汝等の好むまゝに爲さしむ 一三〇―一三二
わが未だ地
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