ことなければなり 七〇―七二
かゝるものは最も是に類《たぐ》ふが故に最も是が心に適《かな》ふ、萬物を照らす聖なる焔は最も己に似る物の中に最も強く輝けばなり 七三―七五
しかしてこれらの幸《さち》はみな、人たる者の受くるところ、一つ缺くれば、人必ずその尊《たふと》さを失ふ 七六―七八
人の自由を奪ひ、これをして至上の善に似ざらしめ、その光に照らさるること從つて少きにいたらしむるものは罪のみ 七九―八一
もしそれ正しき刑罰を不義の快樂《けらく》に對《むか》はしめつゝ、罪のつくれる空處を滿《みた》すにあらざれば、人その尊さに歸ることなし 八二―八四
汝等の性《さが》は、その種子《たね》によりて悉《こと/″\》く罪を犯《をか》すに及び、樂園とともにこれらの尊き物を失ひ 八五―八七
淺瀬の一を渡らずしては、いかなる道によりても再びこれを得るをえざりき(汝よく思ひを凝《こ》らさばさとるなるべし) 八八―九〇
淺瀬とは、神がたゞその恩惠《めぐみ》によりて赦《ゆる》し給ふか、または人が自らその愚を贖《あがな》ふか即ち是なり 九一―九三
いざ汝力のかぎり目をわが詞にちかくよせつゝ、永遠《とこしへ》の思量《はからひ》の淵深く見よ 九四―九六
そも/\人は、その限りあるによりて、贖《あがなひ》をなす能はざりき、そは後神に順《したが》ひ心を卑《ひく》うして下《くだ》るとも、さきに逆きて 九七―
上らんとせし高さに應ずる能《あた》はざればなり、人自ら贖《あがな》ふの力なかりし理《ことわり》げに茲《こゝ》に存す ―一〇二
是故に神は己が道――即ちその一かまたは二――をもて、人をその完き生に復《かへ》したまふのほかなかりき 一〇三―一〇五
されど行ふ者の行は、これがいづる心の善をあらはすに從ひ、いよ/\悦ばるゝがゆゑに 一〇六―一〇八
宇宙に印影《かた》を捺《お》す神の善は、再び汝等を上げんため、己がすべての道によりて行ふを好めり 一〇九―一一一
また最終《いやはて》の夜と最始《いやさき》の晝との間に、これらの道のいづれによりても、かく尊《たふと》くかく偉《おほい》なる業《わざ》は爲されしことなし爲さるゝことあらじ 一一二―一一四
そは神は人をして再び身を上《あぐ》るに適《ふさは》しからしめん爲己を與へ給ひ、たゞ自ら赦すに優《まさ》る恩惠《めぐみ》をば現し給ひたればなり 一一五―一一七
神の子己
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