を見き、さればわが視力《みるちから》これに勝たれで背《うしろ》を見せ 一三九―一四一
我は目を垂《た》れつゝ殆ど我を失へり。 一四二―一四四
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第五曲
われ世に比類《たぐひ》なきまで愛の焔に輝きつゝ汝にあらはれ、汝の目の力に勝つとも 一―三
こは全き視力――その認むるに從つて、認めし善に進み入る――より出づるがゆゑにあやしむなかれ 四―六
われあきらかに知る、見らるゝのみにてたえず愛を燃す永遠《とこしへ》の光、はや汝の智の中にかゞやくを 七―九
もし他の物汝等の愛を迷はさば、こはかの光の名殘がその中に映《さ》し入りて見誤らるゝによるのみ 一〇―一二
汝の知らんと欲するは、果《はた》されざりし誓ひをば人他の務《つとめ》によりて償《つぐの》ひ、魂をして論爭《あらそひ》を免《まぬが》れしむるをうるや否《いな》やといふ事是なり。 一三―一五
ベアトリーチェはかくこの曲《カント》をうたひいで、言葉を斷《た》たざる人のごとく、聖なる教へを續けていふ。 一六―一八
それ神がその裕《ゆたか》なる恩惠《めぐみ》により造りて與へ給へる物にて最もその徳に適《かな》ひかつその最も重んじ給ふ至大の賜《たまもの》は 一九―二一
即ち意志の自由なりき、知慧ある被造物は皆、またかれらに限り、昔これを受け今これを受く 二二―二四
いざ汝|推《お》して知るべし、人|肯《うけが》ひて神また肯ひかくして誓ひ成るならんには、そのいと貴《とほと》きものなることを 二五―二七
そは神と人との間に契約を結ぶにあたりては、わがいふ如く貴きこの寶|犧牲《いけにへ》となり、かつかくなるも己が作用《はたらき》によればなり 二八―三〇
されば何物をもて償《つぐのひ》となすことをえむ、捧げし物を善く用ゐんと思ふは是|※[#「貝+藏」、38−6]物《ぞうぶつ》をもて善事を爲さんとねがふなり 三一―三三
汝既に要點を會得《ゑとく》す、されど聖なる寺院は誓ひより釋《と》き、わが汝にあらはしゝ眞理に背《そむ》くとみゆるがゆゑに 三四―三六
汝なほ食卓《つくゑ》に向ひてしばらく坐すべし、汝のくらへる硬《かた》き食物《くひもの》はその消化《こな》るゝ爲になほ助けを要《もと》むればなり 三七―三九
心を開きて、わが汝に示すものを受け、これをその中に收めよ、聽きて保《たも》たざるは知識をうるの道にあらじ 四〇―四二
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