たりにては我より外に聲を上ぐる者なかりしのみ。 一二一―一二三
我等既に彼を離れ、今はわれらの力を盡して路に勝たんとつとめゐたるに 一二四―一二六
このとき我は山の震ひ動くこと倒るゝ物に似たるを覺えき、是に於てかわが身恰も死に赴く人の如く冷ゆ 一二七―一二九
げにラートナが天の二の目を生まんとて巣を營める時よりさきのデロといふともかく強くはゆるがざりしなるべし 一三〇―一三二
ついではげしき喊聲《さけびごゑ》四方に起れり、師即ち我に近づき、わが導く間は汝恐るゝなかれといふ 一三三―一三五
至高處《いとたかきところ》には榮光神にあれ[#「には榮光神にあれ」に白丸傍点]。衆皆斯くいひゐたり、かくいひゐたるを我は身に近くしてその叫びの聞分《きゝわ》けうべき魂によりてさとれるなりき 一三六―一三八
我等はかの歌を最初に聞ける牧者のごとく、あやしみとゞまりて動かず、震動《ふるひ》止み歌終るにおよびて 一三九―一四一
こゝに再び我等の聖なる行路《たびぢ》にいでたち、既にいつもの歎《なげき》にかへれる多くの地に伏す魂をみたり 一四二―一四四
若しわが記憶に誤りなくば、いかなる疑ひもわがかの時の思ひの
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