―一〇八
かく高き地位をえて心なほしづまらず、またかの生をうくる者さらに高く上《のぼ》るをえざるをみたるがゆゑにこの生の愛わが衷《うち》に燃えたり 一〇九―一一一
かの時にいたるまで、我は幸《さち》なき、神を離れし、全く慾深き魂なりき、今は汝の見るごとく我このためにこゝに罰せらる 一一二―一一四
貪婪《むさぼり》の爲すところのことは我等悔いし魂の罪を淨むる状《さま》にあらはる、そも/\この山にこれより苦《にが》き罰はなし 一一五―一一七
我等の目地上の物に注ぎて、高く擧げられざりしごとくに、正義はこゝにこれを地に沈ましむ 一一八―一二〇
貪婪《むさぼり》善を求むる我等の愛を消して我等の働をとゞめしごとくに、正義はこゝに足をも手をも搦《から》めとらへて 一二一―
かたく我等を壓《おさ》ふ、正しき主の好みたまふ間は、我等いつまでも身を伸べて動かじ。 ―一二六
我は既に跪きてゐたりしが、このとき語らんと思へるに、わが語りはじむるや彼ただ耳を傾けて我の尊敬《うやまひ》をあらはすをしり 一二七―一二九
いひけるは。汝何ぞかく身をかゞむるや。我彼に。汝の分《きは》貴《たか》ければわが良心は我の直く
前へ
次へ
全396ページ中117ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
山川 丙三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング