驍ネり
八五―八七
【大なる角】オデュセウスのディオメデスに比してさらに傑出せるを示す
八八―九三
【ガエタ】ローマの東南セッサ市の西にある港、アエネアスこの處に上陸し死せる保姆カイエクを葬りその名に因みてこゝをカイエタ(ガエタ)と呼べること『アエネイス』第七卷の始めにいづ
【置せし】或ひは、とゞめし
【チルチェ】ガエタとアンチオの岬の間のチルチェイオ山に住める妖女の名
九四―九六
【子】イタカ島に殘しおきしわが子テレマコス
【父】ラエルテス
【ペネローペ】オデュセウスの妻
【夫婦の】debito(義理ある)、父子の如く生れながらの關係にあらざるをいふ
一〇〇―一〇二
【海】地中海
一〇三―一〇五
地中海の兩岸即ち北の岸はイスパニアまで南の岸はモロッコ(アフリカの西北)まで
【スパニア】イスパニア
一〇六―一一一
【せまき口】ジブラルタルの海峽、この海峽二の山に閉さる、ヨーロッパなるをカールペとよび、アフリカなるをアービラと名づく、神話に曰、ヘラクレス、ジエーリオネの牛を得んとてイスパニアにわたりこの處にいたれる時西方地果る處たる標としてこの二の山(ヘラクレスの柱の名あり)をこゝに築けりと
【シヴィリア】イスパニアの西南にある町(地、二〇・一二四―六註參照)
【セッタ】セウタ、ジブラルタルの海峽に面するアフリカの一市
一一二―一二〇
【日を追ひ】日の行方を追うて西に進み
【人なき】南半球はみな水に蔽はれて人の住むべきところなしとの古の話によりてかくいへり
我等既に年老いて餘命いくばくもなければ五官の未だ死の眠りにいらざる間に南半球をさぐるべし
【起原】人間の世にいでし
一二四―一二六
かくて船尾を東にし櫂の翼を驅りて不知の大海に漂ひたえず西南(地球面よりみて東南)の航路を取れり
一三〇―一三二
我等大海に浮びしこの方五ヶ月にして
【月下の光】月の地球にむかへる半面の光
一三三―一三五
【山】淨火の山、イエルサレムの反對面にあり
一三九―一四一
【天意】神は生ける者の足淨火の陸を踏むを許したまはざるなり(淨、一・一三〇―三二參照)
第二十七曲
ウリッセ(オデュセウス)等去りて後グイード・ダ・モンテフェルトロの魂同じく焔に包まれて來りローマニアの現状をダンテに問ひ己が地獄にくだるにいたれる顛末を告ぐ
一―三
【許し】二一行
七―九
【シチーリアの牡牛】アテナイの工匠ペリルロスがシケリア島アグリゲントウムの暴君ファラリスの爲に造れる銅製の牡牛なり、人をこの中に入れて燒けば外に洩るゝ呻吟の聲恰も牛の鳴くに似たり、しかしてその最初の犧牲となれる者乃ちペリルロスなりきといふ
【好し】詩篇五七・六に曰、彼等はわが前に※[#「こざとへん+井」、292−20]をほれりしかしてみづからその中に陷れりと(箴言二六・二七、傳道之書一〇・八等參照)
一三―一五
【はじめは火に】異本、火の尖に
【火のことば】焔の風にゆらめく音(地、二六・八六―七參照)
一六―一八
【舌】グイードの詞はその口を過ぐる時舌よりうけし動搖を炎の尖に傳へ
一九―二二
【ロムバルディアの語】ウェルギリウスの本國の語(地、一・六八參照)
【いざゆけ】ウェルギリウスのオデュセウスにいへる言をくりかへせるなり
ウェルギリウスの首をロムバルディア(地、二八・七三―五註參照)方言といへるについては諸説あり、(一)issa(異本、istra)と adizzo とをこの地方特有の語となすもの(二)前者のみを然りとなすもの(三)言の形にあらず單に發音の相違をいへりとなすもの等これなり
二五―二七
【ラチオの國】ラティウム。イタリア(地、二二・六四―九註參照)
【盲の世】地、四・一三參照、グイードはウェルギリウスを前をうけんためにくだれる罪人なりとおもへるなり
二八―三〇
【ローマニア人】當時のローマニアは東にアドリアティコ海西にボローニア市南にアペンニノ山脈北にポー河を境とせるイタリア東北一帶の地を指す、ラヴェンナ、チェルヴィア、フォルリ、リミニ等の諸市皆この中にあり
【我は】グイード・ダ・モンテフェルトロ、ローマニアなるギベルリニ黨の首領にて當時武勇第一と稱せらる、その生地モンテフェルトロはウルビーノ市とティーヴェレ河の水源地なるコロナーロ山(アペンニノ連峰中の一高山)の間にあり
三四―三六
【下にかくるゝ】橋の下火の中に
三七―三九
【汝の】汝の郷國
【去るにあたりて】一三〇〇年には公けの戰ひなくたゞ例によりて權門勢家互に嫉視反目せり
四〇―四二
【ラヴェンナ】一二七〇年ポレンタ家の手に歸してより一四四一年までその治下にあり
【鷲】ポレンタ家の紋はラーナの説によれば黄地に朱の鷲なり
一三〇〇年にはグイード・ダ・ポレンタ即ち老グイードとて、第五曲にうたはれしフランチェスカの父なりし者ラヴェンナを治めたり
【チェルヴィア】ラヴェンナの南約十二哩アドリアティコ海濱の町にて當時ポレンタ家の治下に屬せり
四三―四五
【邑】フォルリ、一二八一年法王マルチーノ四世多くのフランス人にイタリアのグエルフィ黨を加へし一軍をローマニアに遣はしこの地方のギベルリニ黨を攻めしを、この軍久しくフォルリを圍みしかども城善くその難に耐へ城主グイード・モンテフェルトロ兵を集めて市外に突進し大に敵軍を敗れり
當時フォルリを治めしオルデラッフィ家の紋は上半金地に緑の獅子(ベンヴェヌーチ Benvenut の説による)あるものなりしかばフォルリを緑の足の下にありといへるなり
四六―四八
【ヴェルルッキオの猛犬】マラテスタ家、ヴェルルッキオはリミニの西南約十哩にある城の名、この城久しくマラテスタ家の所有たり、古き犬は第五曲の中なるパオロ及びその兄ジャンチオットの父にてマラテスタ・ダ・ヴェルルッキオといひ新しき犬はその長子乃ち前二者の異母兄にてマラテスティーノといふ、父子共に獰猛リミニ及び其他の領地に君となりて民の膏血を絞れり
【モンターニア】リミニ市ギベルリニ黨の首領なるモンターニア・デ・パルチターティ、一二九五年マラテスタ父子のために虜はれて獄中に死しリミニ市彼等の手に落つ
四九―五一
【白巣の小獅子】マギナルド・パガーニ・ダ・スシナーナ(淨、一四・一八―二〇參照)家紋白地に青の獅子を用ゐたり
【夏より冬に】四季のたえず變遷する如くマギナルドの時宜に應じて黨與を變ぜるをいへり、史家ヴィルラーニ曰、この者ローマニアにてはギペルリニ黨に屬しフィレンツェにてはグエルフィ黨に屬せりと
【ラーモネ】川の名によりて町を示す、即ちラーモネ河畔のファーエンヅァ
【サンテルノ】同上、サンテルノ河に近きイモラ
五二―五四
【洗はるゝもの】チェゼナ、サーヴィオ河畔にある町、一三〇〇年チェゼナ自治制を布き年々ポデスタを選びて政務をとらしめこの者政權を亂用し市民を虐ぐる恐れあるにいたれば直ちにこれを追へり
五五―五七
【人】地獄内なる他の罪人、或曰、ダンテ自身よくグイードの問に答へしをいふと
六一―六三
【この焔は】我は何事をも其人に語るまじ
六四―六六
地獄に苛責を受くる者多くは、詩人の傳言によりて在世知友の間に新しき記憶を呼起さんことを願へり、チヤッコ(地、六・八九)ピエール・デルラ・ヴィーニア(地、二二・五五―六)みたりのフィレンツェ人(地、一六・八五)等これなり、しかるにこれに反し一方には生者にあふを恥辱としつとめてその罪業を掩はんとするものあり、カッチァニミーコ(地、一八・四六)この曲のグイード、コチートのボッカ(地、三二・一〇〇―一〇三)等これなり
六七―七二
【帶紐僧】聖フランチェスコ派の僧。身に紐を帶ぶるを以てこの名あり(九一―三行註參照)、グイードが結縁の身となりしは一二九六年のことなり
【大いなる僧】法王ボニファキウス八世
七三―七五
わが世に住みし間の行は猛者の行といはんよりはむしろ奸智に長けし者の行なりき
七九―八一
ダンテの『コンヴィヴィオ』四、二八・一四以下に曰く
クリオがその『老年論』にいへる如く自然の死は長き航海の後なる港また休みともいひつべし、されば良き舟人の港に近づくにあたり其帆をおるしてゆるやかに船を操りしづかにそこに入る如く、人また地上の活動の帆ををさめその志を盡し心を盡して神に歸るべきなり
八五―八七
【ファリセイびとの王】法王ボニファキウス八世、即ち當時の僧侶(僞善者)の王なり、僞善者を第二のパリサイ(ファリセイ)人といへるは聖書によれり(マタイ、二三・一三等)
【ラテラーノ】ローマ市の一部、コロンナ家はラテラーノなる聖ジョヴァンニの寺院近き處にありしなり
一二九七年法王ボニファキウス八世軍を起してコロンナ家を攻め遂にペネストリーノ(ローマを距る約二十四哩)にあるその本城を圍むにいたれり、されどこの城はアペンニノ連峰の裾にあり要害堅固にして容易に落つべくもあらざりければ法王やがてグイードの智を借り奸計を用ゐてこれを奪へり
【サラチーノ(サラセン)人、ジュデーア人】法の爲、教の爲、異教徒と戰へるにあらず
八八―九〇
その一人だに教に背きキリスト教徒たる實を失ひしはなし
【アークリ】シリアの一市、パレスチナなるキリスト教徒最後の苦戰その效なく、一二九一年、サラセン人の手に歸せり
【ソルダーノの地】ソルダン。アークリ陷落の後法王令旨を下し一般キリスト教徒のイスラム教徒と貿易を行ふことを禁ぜり、ソルダンの地は主にアレクサンドレア及びエヂプトを指す
九一―九三
【瘠する】戒めと斷食によりて身瘠するなり
【紐】天、一一・八七に卑しき紐といひ同一二・一三二に紐に上りて神の友となりとあり、身を卑しうして貧しき者と親しみ慾を戒めて上帝と親しむの意を寓せるなり
九四―九九
【コスタンティーン】コンスタンティヌス。當時の傳説に曰、コンスタンティヌスはキリスト教徒を迫害せるため冥罰によりて癩を病めり時に一醫の言を進むるあり曰ふ小兒を集めその血を絞り大帝自らこれに浴せば病即ち癒えんと、無辜の兒童等宮廷に集めらるゝに及び母の號泣する聲大帝の耳に入る大帝小兒を殺すにしのびずこれを殺さんよりは我むしろ死を待つべしといふ、この憐憫の情上帝の嘉納し給ふところとなりペテロ、パウロの兩聖徒夜帝にあらはれてシルヴェステル(地、一九・一一五―七註參照)を訪ふべしと告ぐ、この頃シルヴェステルは迫害を避けてシラッティといふローマ附近の山中にひそみゐたりければ大帝即ちこゝに赴き洗禮をうけてキリスト教徒となり癩病全く癒えたり、かの有名なる大帝供物の一條(地、一九・一一五―七)もまたこの事に基づきてなりと
【傲の熱を】コロンナ一家を倒してひとり勝を誇らんとの熱望を達せんとて
一〇〇―一〇二
【ペネストリーノ】八五―七行註參照
一〇三―一〇五
【鑰】天國の(地、一九・九二參照)
【我よりさきに】ケレスティヌス五世、位を退けるを鑰を尊まずといへり(地、三・五八―六〇註參照)
一〇六―一一一
【長く約し】ペネストリーノをわが物とする策は他にあらず、多くの事を約束してしかもその約束を果さざるにあり
ペネストリーノの城危機に瀕し和を乞ふにいたれる時(一二九八年)法王より寛典の沙汰ありければコロンナ家の出なる二人のカルディナレ、法王の許にいたれるに法王はたゞに破門の取消ををせるのみならず彼等の名譽地位財産をももとのまゝならしむる意あることを告げ彼等をこゝに止めおき之と同時に人を遣はしてペネストリーノを占領せしめ盡くこの市を破壞したり
一一二―一一四
【黒きケルビーニ】鬼(地、二三・一三一)、當時色黒き人の形を畫きて鬼となせるより黒きといふ、またケルビーニは九種の天使の一なり、各種の天使天を逐はれて地獄にくだれり
一一八―一二〇
【悔いと願ひ】罪を悔ゆる心と罪を犯さんとの意志とは兩立せず
一二四―一二六
【ミノス】ミノスの八度尾を捲くは罪人の第八の地獄に落つべきものなるを示す(地、五・四以下)
一二七―一二九
【盜む火】罪人をつゝみかくす火乃ち第八嚢(地、二六・四一―二參照)
【衣】炎の
一三三―一三六
【分離を】不和軋轢の種を蒔きそのため罪の重荷
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