こゝに大敵プルートを見き 一一五―一一七
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   第七曲

パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ、聲を嗄らしてプルートは叫べり、萬《よろづ》のことを知りたまへるやさしき聖《ひじり》 一―三
我を勵まさんとていひけるは、汝おそれて自ら損ふなかれ、彼にいかなる力ありとも、汝にこの岩を降らしめざることあらじ 四―六
またかの膨るゝ顏にむかひいひけるは、默《もだ》せ、冥罰《みやうばつ》重き狼よ、その怒りをもて己が心を滅ぼし盡せ 七―九
かく深處《ふかみ》にゆくは故なきにあらず、こはミケーレが仇を不遜の非倫にかへせる天にて思ひ定められしなり 一〇―一二
たとへば風にはらめる帆の檣碎けて縺れ落つるごとく、かの猛き獸地に倒れぬ 一三―一五
かくして我等は宇宙一切の惡をつゝむ憂ひの岸をすゝみゆき、第四の坎《あな》に下れり 一六―一八
あゝ神の正義よ、かく多くの新なる苦しみと痛みとを押填《おしつ》むるは誰ぞ、我等の罪何ぞ我等をかく滅ぼすや 一九―二一
かの逆浪《さかなみ》に觸れてくだくるカリッヂの浪の如く、斯民《このたみ》またこゝにリッダを舞はではかなはじ 二二―二四
我はこゝに何處よりも多くの民のかなたこなたにありていたくわめき、胸の力によりて重荷をまろばすをみき 二五―二七
かれらは互に打當り、あたればたゞちに身を飜し、何ぞ溜むるや何ぞ投ぐるやと叫び、もときしかたにまろばせり 二八―三〇
かくて彼等はかなたこなたより異なる方向《むき》をとりてまたも恥づべき歌をうたひ、暗き獄《ひとや》を傳ひてかへり 三一―三三
かくして圈の半《なかば》にいたればふたゝびこゝに渡り合ひ、各※[#二の字点、1−2−22]その身をめぐらせり、心刺さるゝばかりなりしわれ 三四―三六
いひけるは、わが師よ、これ何の民なりや、また我等の左なる髮を削れるものらすべてこれ僧なりしや、いま我に示したまへ 三七―三九
彼我に、かれらは悉く第一の世に心ゆがみて程よく費すことをなさざりしものなり 四〇―四二
こはこの地獄の中|表裏《うらうへ》なる咎かれらを分つ二の點にいたる時かれらその吠ゆる聲によりていと明かならしむ 四三―四五
頭に毛の蔽物《おほひ》なき者は僧なりき、また法王、カルディナレあり、慾その衷に權を行ふ 四六―四八
我、師よ、わが識れるものにてこの罪咎に汚るゝものかならずかれらの中にあらん 四
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