とてこれを地に伸ぶ 六一―六三
またひとり喉を貫かれ、鼻を眉の下まで削《そ》かれ、また耳をたゞ一のみ殘せるもの 六四―六六
衆と共にあやしみとゞまりてうちまもりゐたりしが、その外部《そと》ことごとく紅なる喉吭《のどぶえ》を人よりさきにひらきて 六七―六九
いひけるは、罪ありて罰をうくるにあらず、また近似《により》の我を欺くにあらずば上《うへ》なるラチオの國にてかつて見しことある者よ 七〇―七二
汝歸りてヴェルチェルリよりマールカーボに垂るゝ麗しき野を見るをえば、ピエール・ダ・メディチーナの事を忘れず 七三―七五
ファーノの中のいと善き二人《ふたり》メッセル・グイードならびにアンジオレルロに、我等こゝにて先を見ること徒《いたづら》ならずば 七六―
ひとりの殘忍非道の君信を賣るをもて彼等その船より投げられ、ラ・カットリーカに近く沈めらるべしと知らしめよ ―八一
チープリとマイオリカの二の島の間に、海賊によりても希臘人《アルゴスびと》によりてもかゝる大罪の行はるゝをネッツーノだに未だ見ず 八二―八四
かの一をもて物を見、かつわが同囚《なかま》のひとりにみざりしならばよかりしをとおもはしむる邑《まち》の君なる信なき者 八五―八七
詢《はか》ることありとて彼等を招き、かくしてフォカーラの風のためなる誓ひも祈りも彼等に用なきにいたらしむべし 八八―九〇
我彼に、わが汝の消息《おとづれ》を上《うへ》に齎らすをねがはゞ、見しことを痛みとするは誰なりや我に示しかつ告げよ 九一―九三
この時彼手を同囚《なかま》のひとりの※[#「鰐」の「魚」に代えて「月」、第3水準1−90−51]《あぎと》にかけて口をあけしめ、叫びて、これなり、物いはず 九四―九六
彼は逐はれて後チェーザレに説き、人|備《そなへ》成りてなほためらはゞ必ず損害《そこなひ》をうくといひてその疑ひを鎭めしことありきといふ 九七―九九
かく臆することなく物言ひしクーリオも舌を喉吭《のどぶえ》より切放たれ、その驚き怖るゝさまげにいかにぞや 一〇〇―一〇二
こゝにひとり手を二《ふたつ》ともに斷たれしもの、殘りの腕を暗闇のさにさゝげて顏を血に汚し 一〇三―一〇五
さけびていふ、汝また幸なくも事行はれて輙ち成るといへるモスカをおもへ、わがかくいへるはトスカーナの民の禍ひの種なりき 一〇六―一〇八
この時我は詞を添へて、また、汝の宗族《
前へ
次へ
全187ページ中78ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
山川 丙三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング