ですから私は目下のところ本格物は書けないようです。
一々事実にくっ付けて一分一厘|隙《すき》のないようにキチキチとキメツケて行く苦しさに、いつも書きかけては屁古垂《へこた》れさせられて終《しま》います。
九大の某教授なぞはいつでも来い、タネを遣るからと云われますが、ドウしても貰いに行く勇気が出ません。ヴァンダインの探偵小説作家心得なぞを読むと猛然として反抗してみたくなりますが、サテ紙に向うと一行も書かないうちにトテモ駄目な事がわかって憂鬱になってしまいます。
私は探偵小説作家のなり損《そこな》いかも知れません。
底本:「夢野久作全集11」ちくま文庫、筑摩書房
1992(平成4)年12月3日第1刷発行
入力:柴田卓治
校正:しず
2001年7月23日公開
2006年3月4日修正
青空文庫作成ファイル:
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