。只もう嬉しくて嬉しくて」
 という表現を作っております。その表現はそのチョッピリとした鼻の背景として、そうした気分を弥《いや》が上にも引っ立てているかのように見えます。「おかめ」の一名をお多福というのは、こうして現在のすべてに満足している気持ちを云ったものと推察されるようであります。
 畢竟《ひっきょう》するところ、この二つの鼻の表現は人間の性格の両方向の行き詰りで、「天狗」は極度の増長と高慢を――又「おかめ」は極度の謙遜と無知無能とを表現しているのであります。
 然るに「ヒョットコ」となると、その高慢も謙遜もありませぬ。全く明け放しの鼻の表現をしております。
 すべてに対して驚いております、不思議がっております、ビクビクしております、うろたえております、ヒョットコヒョットコしております。只色気を見せる鼻毛と、喰毛《くいけ》を見せる口だけが並外れて長いという、つまり極度に文化程度の低下した無知無能な性格を表わしております。地方に依りまして「ヒョットコ」の一名を「モグラ」というのは、土から顔を出して眼をパチクリさせるなり慌ててもとの土にもぐり込む※[#「鼠+(偃−イ)」、482−17]
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