から絶滅している種類だと聞いているのに……おかしいなあこんな処に居るのは……」
「その木乃伊《ミイラ》の棺の中から生き返った奴が埃及《エジプト》から飛んで来たのじゃないでしょうか」
「アハハハ。そうかも知れんのう。とにかく標本にしといて御覧……学界に報告してみるから……」
 青酸|瓦斯《ガス》にみちみちた硝子《ガラス》の毒壺に入れられるべくピンセットで挟み上げられた時、彼女は思わず手足と触角を振りまわして悲鳴をあげた。今を最後の千古の神秘をこめて、
「ギチギチギチギチ。イチイチイチイチ。ギイギイギイ。カヤカヤ……カヤカヤカヤカヤカヤ……」



底本:「夢野久作全集3」ちくま文庫、筑摩書房
   1992(平成4)年8月24日第1刷発行
入力:柴田卓治
校正:kazuishi
2000年10月25日公開
2006年3月8日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全2ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング