回答ありたし」
 と当てズッポーで威《おど》かしてやったら、今度は方向を違えた釜山警察署から報告が来た。……ハハア……総督府の奴、物騒と見て取って責任を回避しおったな。卑怯な奴だ。……その報告書がコレか……成る程。総督府宛の内容のものを、そのままコッピーにして送って来た訳だな。ウンウン。朱線を引いた処が要点か。
「……如何なる方面より風聞せられしものなるや判明せざれど、右類似の事件は当署管内に於て確かに発生せし事|有之《これあり》……」
 ……いかにも、コイツは多少名文らしいね。チョイト絡んで来たところが気に入ったよ。
「去る大正八年十月十四日、午後一時頃、釜山公会堂に於て、轟総督府技師の「爆弾漁業」に関する講演中、同技師が見本として提出したる二個の漁業用爆弾が過って炸裂し、傍聴者たりし判検事、署長等(氏名を略す)七名の死者を出したる事件あり。(芸妓《げいしゃ》二名の死傷は訛伝《かでん》也)……」
 プッ……馬鹿な。朝鮮官吏の低能と来たら底が知れない。コンナ事でお茶が濁せたらお慰みだ。警察の発表なら誰でも信用すると思っているんだから恐ろしい。そこで……と……。
「……右は前記轟技師の不
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