るのが習慣になっとるらしいが、その時には必ず浴衣《ゆかた》に着換えている。そうしてこれも何か知らん薬を服《の》んでから寝るらしいがね」
「当日も変った事はなかったんですね」
「イヤ。あったんだ。しかもタッタ一つ奇妙な事があったんだ。少々神秘的なことが……」
「ヘエ。神秘的と云いますと……」
「それが面白いのだ。この家の女中はズット以前……この家が建った当時から二人きりに定《き》まっている。こう見えてもこの家は案外広くないのだ。部屋らしい部屋はタッタ四|室《ま》しかない上に、万事がステキに便利に出来ているからね……ところで一番古く、建った当時から居るのが今云うた松井ヨネ子という二十六になる逞ましい肉体美の醜女《オッペシャン》だ。コイツが田舎出の働き者で、家の内外の掃除から、花畠の世話まで少々荒っぽいが一人で片付ける。しかも轟九蔵と天川呉羽の性生活について非常な興味を持っているらしく、そいつがわかるまでは断然お暇を貰わないつもりですとか何とか、吾々の前で公々然と陳述する位、痛快な女なんだ。何でもどこか極めて風俗の悪い村から来ているらしく、万事心得た面構えをしているが、しかし遺憾ながら、まだ
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