んで、能の真実の力に打ちひしがれて満足し得る芸術愛好者、もしくは芸術研究家は、この尖端芸術とか、大衆芸術とか言って差別待遇を受けている吾々の仲間以外にいないのであろうか。
両氏とも非常に謙遜した評をしているようである。しかも、その評は現代の能楽界そのものの弱点と、能の心臓とも言うべき処にグングン突込んでいる。ことにワキ師の無気力と、チョコチョコ技芸を無用視している処なぞ、思わず襟を正すものがある。白紙の力である。無意識の権威である。
乱歩氏の分は私信を無断で公表させて貰った。それだけの罪を負う価値があると思ったからである。併せて先輩を晒し物にして批判した罪も謹しんで負う。道成寺を見なかったムシャクシャ腹で言うのではない。
底本:「夢野久作全集7」三一書房
1970(昭和45)年1月31日第1版第1刷発行
1992(平成4)年2月29日第1版第12刷発行
初出:「喜多」
1935(昭和10)年6月
入力:川山隆
校正:土屋隆
2007年7月21日作成
青空文庫作成ファイル:
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