小さな穴を通じて映写せねばならぬ。無論、内部でどんな人間が、どんな態度で見物しているかわからないように出来ている。
ところがそうなると、いよいよのぞきたいのは人情である。遂に彼等の中には、いろんな工夫をして、中をのぞきながら映写する方法に成功するものが出来た。
その実見談は、遺憾ながらここに書く事が出来ぬ。只、前に述べた不思議な道具の使用法が如何に深刻なものであるかを、彼等はあらかた知る事が出来たと云うに止めておく。
勿論、この話は彼等の話の要点だけであって、作り話や針小棒大と思われるところは皆|削《けず》った。
信ぜられぬと云う人は、信ぜられぬ方がいいかも知れぬ。
上流婦人の堕落
他所《よそ》では知らぬ。
東京の女道楽に飽きた男は、次第にこうした変態性欲に落ちて行く。平凡な春画の他に、血を流す美少年、猛獣に喰われる美女なぞの絵を愛好する。そのような幻想に近い実感を得ようとあせっている。
東京人の堕落は、こうして爛熟期が糜爛期に入って行く。
上流婦人の堕落は、更にこの傾向を助けている。
所謂紳士淑女の裡面が如何に醜いものであるかという事は、今に初めて知ら
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