出ない。同時にそんな感じを超越して男性を見たり、批評したり、交渉したりする心のゆとりが出来て来るわけである。
彼女たちはこうして益《ますます》その批評眼を高くし、享楽趣味を深くし、独立自由の気分を男子と同等にまで高潮させて行く。親の厄介になって好かぬ結婚に縛られるより、職業婦人になってもというような意味の向学心を強めて行く。
これは男子学生とても同様である。
将来の日本には独身の男女が嘸《さぞ》かし殖えることであろう。
交際の場所と機会
さて、かような異性同志の交際はどんな風に結ばれて行くか。
学校や家庭の眼を忍んで、若い同志享楽したりすると、九州地方では直ぐに「不良」呼ばわりをされる。記者も九州の人間だから、そんなのを不良の中に数え入れたわけである。
しかし、東京ではそんな心配はない。よしんば八釜《やかま》しく云う者が居るにしても、この頃の東京の少年少女は滅多に尻尾を押えさせぬ。探偵小説的、又は活動写真的の巧妙な手段で、警察でも友人でも煙に捲こうとする。そんな事をわざわざやって喜ぶ位である。
しかも東京にはそんな手腕を揮う場所と機会が無暗《むやみ》に多い。
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