の犬結核はドウなるんだ」
「ハイ。いよいよカニウレが有害な事がわかれば、その次には羽振式のカニウレを作りまして、決してソンナ心配のないように致しますので……」
羽振学士の顔色が、ダンダンよくなって来た。
「ふうむ。ソレ位の事で博士になれるのか」
「なれる……だろうと思いますので……」
「うむ。マアなるつもりでセイゼイ鼻毛を伸ばすがいい。ところで改めて相談するが、この犬の結核を何とかして治癒《なお》す訳には行かんのか」
「さあ。コイツは一寸《ちょっと》なおりかねます」
「博士になれる位なら、犬の結核ぐらいは何でもなく治癒せるじゃろう」
「ハハハ。なんぼ博士になりましても、コンナ重態の奴はドウモ……」
「モトモト君が結核にしたんじゃないか……この犬は……」
「……そ……それはそうですけれども、治癒すとなりますとドウモ……」
「ふうむ。そんなら君は病気にかける方の博士で、治癒す方の博士じゃないんだな」
「……そ……そんな乱暴なことを……モトモト実験用に買った犬ですから僕の勝手に……」
「……黙れ……」
「……………」
「いいか。耳の穴をほじくってよく聞けよ。貴様は空呆《そらとぼ》けているよ
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