した。
この時、お父さんとお母さんは眼をさまして御覧になると、雪子さんは寝床の中にいません。そして床の間を見ると、玩具のバケツを壁に押し当てています。外からはゴリゴリと壁を破る音……。
お父さんとお母さんは、初めはビックリしましたが、すぐに訳がわかり、雪子さんの勇気に大そう感心しました。なおも様子をジッと見ていますと、泥棒はとうとう厚い壁を切り抜いて、もういいと思って小刀の先で突いて見ると、どうでしょう。壁のまん中でもやはりカンカンカンと音がします。泥棒は腰を抜かさんばかりに驚きました。そしてため息をして言いました。
「これは驚いた。家中すっかり金張りだ」
家の中で、雪子さんとお父さんとお母さんとが一どきに笑い出しました。
「アハハハハハハ」
「オホホホホホホ」
「ウフフフフフフ」
泥棒は夢中になって逃げ出すと、すぐに通りがかりの巡査さんに捕まりました。
底本:「夢野久作全集7」三一書房
1970(昭和45)年1月31日第1版第1刷発行
1992(平成4)年2月29日第1版第12刷発行
初出:「月刊探偵 2巻5号」
1936(昭和11)年6月
入力:川山
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