郎の「剣舞」、金太郎の「力持ち」、獣《けもの》のダンス、鳥のダンスなぞが次から次へ数限りなく、いつまで見ても面白う御座いました。
 その一番おしまいには「へのへのもへし」「山水天狗」「つるまむし」の三人が手を引き合って飛び出して、へのへの踊りというのをやりました。そのうたはこうでした。
「へのへのもへし[#「へのへのもへし」に傍点]につるまむし[#「つるまむし」に傍点]
 山水天狗[#「山水天狗」に傍点]の三人は
 生まれ故郷は知らねども
 かしこやここの白壁や
 扉や窓に現われて
 誰が描《か》いたと睨まれる

 描《か》き散らかしたわるものは
 私はちゃんと知っている
 けれども云ったら大変だ
 だから私はだまってる

 描《か》いた坊ちゃん嬢ちゃんは
 蔭の方からクスクスクス
 赤い舌をペロペロペロ

 父さん母さん憤《おこ》り出し
 急いで消して終《しま》うけど
 またそのうちに私等は
 他の処にあらわれる
 いくつもいくつもあらわれる

 だれも消さないその時は
 雨にたたかれ洗われて
 次第次第に消えて行く

 消えない間のおたのしみ
 さあさあ踊らせ歌わんせ
 山水天狗[
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