郎の「剣舞」、金太郎の「力持ち」、獣《けもの》のダンス、鳥のダンスなぞが次から次へ数限りなく、いつまで見ても面白う御座いました。
その一番おしまいには「へのへのもへし」「山水天狗」「つるまむし」の三人が手を引き合って飛び出して、へのへの踊りというのをやりました。そのうたはこうでした。
「へのへのもへし[#「へのへのもへし」に傍点]につるまむし[#「つるまむし」に傍点]
山水天狗[#「山水天狗」に傍点]の三人は
生まれ故郷は知らねども
かしこやここの白壁や
扉や窓に現われて
誰が描《か》いたと睨まれる
描《か》き散らかしたわるものは
私はちゃんと知っている
けれども云ったら大変だ
だから私はだまってる
描《か》いた坊ちゃん嬢ちゃんは
蔭の方からクスクスクス
赤い舌をペロペロペロ
父さん母さん憤《おこ》り出し
急いで消して終《しま》うけど
またそのうちに私等は
他の処にあらわれる
いくつもいくつもあらわれる
だれも消さないその時は
雨にたたかれ洗われて
次第次第に消えて行く
消えない間のおたのしみ
さあさあ踊らせ歌わんせ
山水天狗[
前へ
次へ
全12ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング