要りません。問題は大連《たいれん》に着いてからです。大連から清津《せいしん》へ抜けて、あすこから浦塩《うらじお》へ抜ける途《みち》がありますから……露西亜《ロシア》語ならお手のものでしょう……ハラショ……済みませんがそのベルをモウ一度押して下さい。いくつでもよろしい。デッキの部屋へ二人分の寝床を支度させましょう。ヘヘヘ……オイ。ボン州、銀州、エテ公。チョット来い。用がある……ウン。扉《ドア》を閉めてこっちへ這入れ……。こいつを押さえろッ……その万年筆を取上げろッ……毒|瓦斯《ガス》らしいから……。
アハハ。どうです。身動きが出来ないでしょう。僕の部下は素早いでしょう。ハハハ。お断りしておきますが、今まで云った事はみんな嘘です。この船は国際的ルンペン船でもなけあ、日本の諜報《スパイ》船でも何でもない。貴女はまだ御存じないでしょうが、日本と支那の間を、荷物船《カーゴボート》に化《ばけ》て往復しているG《ゲー》・P《ペー》・U《ウー》の海上本部K・G・M号です。そうして僕はこの船の船長ですよ。わかりましたか。ハハハ。……貴女がG・P・Uを裏切って、日本に隠れようとしていることを看破した王君
前へ
次へ
全46ページ中41ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング