舌《しゃべ》り続けた経験談なんかは、ミンナ受け売りのゴッタ雑炊《ぞうすい》だ。トランクの中味がわかるまで君を釣っとくためのヨタだった……と云ったら、尚の事、焦点《フオカス》がハッキリしやしないか。ハッハッハッ……ナニ……日本のスパイ船……僕が参謀将校……ウフウフ。当らずと雖《いえど》も遠からずと云っておくかね。
 ……フーン。何だって、僕に秘密の相談がある? 何だ。云って見たまえ。ナニイ。聞いてる者が居ちゃ話せない。ウン。よしよし……。オイ。ボン州。こいつのオモチャを取り上げてくれ。モウ外《ほか》に何も持っていないな。万年筆と名刺だけか。よしよし。それだけ残しとけ。後で書かせる事があるかも知れないから……それから手前《てめえ》等はこの室《へや》を出て、扉《ドア》をピッタリと閉めておけ。用があったらベルを押すから……ナアニ。俺の事は心配するな。この坊ちゃんは話がよくわかっていらっしゃるんだからな……。
 サア。誰も居ない。鍵穴まで閉《ふさ》がっているんだ。その秘密の相談というのを聞こうじゃないか。何だ何だ。何だって服を脱ぐんだ。ハハア。裏に縫い込んだな。G《ゲー》・P《ペー》・U《ウー》
前へ 次へ
全46ページ中37ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング