密輸入目当ての海賊船たあ思わなかったかい。それよりもこの王さんの顔をモウ見忘れたのかい。チットばかり細工はしているが、あんまり見識《みし》り甲斐《がい》がなさ過ぎるじゃないか。眼付きを見ただけでも日本人とわかりそうなもんだが……アハハハ。姐《ねえ》さんにも似合わない。K・G・Mが海牛丸の洒落《しゃれ》と気付かなかったばっかりにスッカリ底をハタイちゃったね。フフフ……。
ああくたぶれた。焦点《フオカス》が合わないので恐ろしく手間を喰わせやがった。女はドウモ苦手だ……ハハン……。モウいいから片付けちまえ。ホラッ……喰い付かれるなとタッタ今云ったじゃないか。見ろ……。
……オイオイ。扉《ドア》を開け放して行く奴があるか。馬鹿野郎。ハッハッ。アトは汽鑵《かま》へブチ込むんだぞ……ハッハッハッハッハッハッ……。
底本:「夢野久作全集6」ちくま文庫、筑摩書房
1992(平成4)年3月24日第1刷発行
底本の親本:「冗談に殺す」春陽堂
1933(昭和8)年5月15日発行
※底本の「上海《シャンハイ》をを」「上海《シャンハイ》にに」をそれぞれ、「上海《シャンハイ》を」「上海《シャンハイ》に」に改めました。
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2004年1月5日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全12ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング