したので、臼杵君も開業|※[#「勹<夕」、第3水準1−14−76]々《そうそう》赤の縄付を出したとあっては……」
「アハハ。いかにも御尤《ごもっと》もですな。それじゃこう願えますまいか。明朝なるべく早くがいいですな。何かしら絶対に間違いのない用事をこしらえてその娘を外出させて下さいませんか。行先がわかっておれば尚更結構ですが」
「……承知しました。それじゃこうしましょう。僕が南洋土産の巨大《おおき》な擬金剛石《アレキサンドリア》を一|個《つ》持っております。姉も妻もアレキサンドリアが嫌いなので、始末に困っておるのですが、それをあの娘に与《や》って、直ぐに指環に仕立るように命じて伊勢崎町の松山宝石店に遣りましょう。遅くとも九時から十時までの間には、出かける事と思いますが……十時頃から忙しくなって来ますから」
「結構です。しかし近頃の赤はナカナカ敏感ですから、よほど御用心なさらないと……」
「大丈夫と思います。今夜、ここへ伺った事は誰も知りませんし……それに妻《かない》がズット前、姫草に指環を一つ買って遣るって言った事があるそうですから……」
「成る程ね。それじゃソンナ都合に……」
「承知
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