の侮辱を感ずるようになって来ました。私は便所の中で下級生の人達がコンナ会話をしているのを聞きました。
「スゴイわねえ火星さん」
「まあ……誰のこと……火星さんて……」
「あら……御存じないの。甘川歌枝さんの事よ。あれは火星から来た女だ。だから世界中のドンナ選手が来たって勝てるはずはないんだって、校長先生が仰言ったのよ。だから皆、この間っから火星さん火星さん言ってんのよ」
「まあヒドイ校長先生……でも巧い綽名《あだな》だわねえ。甘川さんのあのグロテスクな感じがよく出てるわ」
 それでも気の弱い私は又も、欺《だま》されたり持ち上げられたりして、年に何度かの競技に引張り出されるのでした。心のうちにある冷たい空虚を感じながら……。
 学校の運動場のズット向うの、高い防火壁に囲まれた片隅に、物置小舎になっている廃屋《あばらや》があります。モトは学校の作法教室だったそうですが、今では壁も瓦も落ちて、ペンペン草が一パイに生えて、柱も階段も白蟻《しろあり》に喰われて、畳が落し穴みたいにブクブクになっております。
 私は課業の休みの時間になりますと、よく便所の背面《うしろ》から弓の道場の板囲いの蔭に隠れ
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