、あらぬ事のみ口走りおりたるを一先ず中之島署に保護し、当市警察に照会し来たるを以て、開校間際の多忙を極めおりし教頭、小早川《こばやかわ》教諭は、十一時の列車にて取りあえず大阪に急行した。然《しか》るに同教諭出発後、教頭次席、山口教諭指揮の下に引続き開校準備に忙殺されいるうち、同校職員便所に於て、同校古参女教諭、虎間トラ子(四十二)が縊死《いし》しおる事が、掃除に行きし小使に発見されて、一同を狼狽《ろうばい》させおるうち、同じく開校準備のため出勤しおりし同校書記にして、森栖校長と共に三十年来、同校の名物となりおりし傴僂《せむし》男、川村|英明《ひであき》(五十一)が同様に、いつの間にか姿を消している事が、出張の警官により気付かれたので、念のため取調べてみると、意外にも同校の金庫中に保管して在った森栖校長の銅像建設費五千余円、及、校友会費八百二十円の通帳が紛失しおり、預金先、勧業銀行に問合わせたる処、正午近き頃、川村書記が同銀行に来り、右預金の殆《ほとん》ど全額を引出し、愴惶《そうこう》たる態度で立去りたる旨判明、なお市外十軒屋に居住しおりし同人妻ハル(四十七)も家財を遺棄し、旅装を整え、
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