がある。しかも該屍体を大学に於て解剖に付した結果、二十歳前後の少女の屍体にして、特に腰部の燃焼十分なるような燃料を配置したる形跡あり。その結果、警察側にては色情関係の殺人放火事件と見込を付け、容易ならぬ事件と認め、右に関する記事の掲載を差止め、極度の緊張裡に厳重なる調査を開始したが、爾後《じご》一週間に到るも犯人は勿論、当該屍体の身元すら判明せず。噂《うわさ》は噂を生んで既に迷宮入りを伝えられ、必死の努力を続行中なる司法当局の威信さえも疑われむとする状態に立到っていたが、その後、当局にては何等か見る処があるらしく、今《こん》一日、突然に右記事を解禁するに到った。これは当局に於て、動かすベからざる重大な端緒を掴《つか》んだ証左と考えられ、従って右事件の真相が社会に公表されるのも遠い将来ではないと信じ得べき理由がある。
他殺放火の疑い十分[#「他殺放火の疑い十分」は2段階大きな文字]
但、例の放火魔では無いらし[#「但、例の放火魔では無いらし」は1段階大きな文字]
右事件は依然として当局の調査続行中のため、今も尚、一切を秘密に付せられているが、事件発生直後本社の探聞し
前へ
次へ
全225ページ中138ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング