か猫みたいに僕を撃殺《うちころ》そうとしやがったんです。あんな奴が社会主義を製造する奴なんですから徹底的にタタキ附けとかなくちゃ……」
「ヒッヒッ。もうアレだけ書かれりゃ大抵ピシャンコになっているじゃろう。おまけにイクラ広告や記事で取消しても、あの写真ばっかりは取消せんけにのう。たしかにあの煙草屋の門口に安島家の俥《くるま》が着いとるけにのう。自殺を知らずに迎えに来たちう現《げん》の証拠が……」
「アハハハ。ちょっと待って下さい。あの写真はインチキですよ。あの家《うち》の写真と、人力車の写真を僕が貼り合わせたんですよ」
「ホホオ。そんならあの紋所は……」
「あれも僕が白絵具で描《か》いたんです」
「……………」
山羊髯が唖然となった。
吾輩は入社以来、初めて山羊髯を一パイ喰わせたので、スッカリ機嫌を直してしまった。
……これだから新聞記者は止められない……。
底本:「夢野久作全集4」ちくま文庫、筑摩書房
1992(平成4)年9月24日第1刷発行
※本作品中には、身体的・精神的資質、職業、地域、階層、民族などに関する不適切な表現が見られます。しかし、作品の時代背景と価値、加えて、作者の抱えた限界を読者自身が認識することの意義を考慮し、底本のままとしました。(青空文庫)
入力:柴田卓治
校正:かとうかおり
2000年9月9日公開
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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