る世界は、その上に更に『認識』もしくは『時間』を掛け合わせた四次元もしくは五次元の世界が現在吾々の住んでいる世界なんだ。その高次元の精神科学の世界で行われている法則は、唯物世界の法則とは全然正反対と云ってもいい位違うのだ。その不可思議な法則の活躍状態は、既に今まで君がこの部屋で見たり聞いたりして来た話だけでも、十分に察しられるだろう。……その中からこの事件の解決の鍵を探し出せばいいのだ。……否……この事件の鍵は、もうトックの昔に、君のポケットに落ち込んでいる筈だがね。ツイ今しがた慥《たし》かにその鍵を君の手に渡した事を、吾輩はハッキリと記憶しているのだがね」
「……そ……それはドンナ鍵……」
「離魂病の話さ」
「離魂病……離魂病がどうしたんですか」
「ハハハハ。まだわからないと見えるね」
「……わ……わかりません」
「……いいかい……この事件で差当り一番不思議に思えるところは、君とソックリの人間がモウ一人居る事であろう。そのモウ一人の君自身のお蔭で、スッカリ事件がコグラカッてしまっている訳だろう。しかも、それは君の離魂病のせいだっていう事をツイ今しがた、説明して聞かせたばかりのところじゃないか」
「だって……だって……そんな不思議な……馬鹿馬鹿しい事が……」
「ハッハッハッ。まだ離魂病が信じられないと見えるね。まあまあ無理もないさ。誰でも自分の頭が一番、確実《たしか》だと信じているんだからね。その方が結局、無事でいいし、お蔭で話の筋道もステキに面白くなって来る訳だから、そう慌てて結論を付ける必要もないだろうよ。呉一郎を発狂さした犯人はあらゆる人間の中の一人か、又は呉一郎自身か、それとも又、絵巻物が独り手に弥勒《みろく》様のお像から脱け出して活躍したものか……というこの三つを前提にしてユックリと考えた方がいい。そうして冷静な気持で君の過去を思い出した方が早道だ」
「……しかし……そんな神秘的な……不思議な事実が……」
ここまで云いかけると私は、自分自身の考えに堪《た》えられなくなって言葉を切った。
「だから慌てるなと云うんだよ。今に神秘でも何でもなくなるから……」
「……でも……今っていつです」
「いつだか解らないが、きょうは駄目だよ。吾輩は君の記憶力を回復すべく、先刻《さっき》からの話の中《うち》に、かなり強烈な精神科学の実験を君に対して、かけ通しにして来たんだけ
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