少女と、双生児《ふたご》の片ッ方か何かとを、見ず知らずの赤の他人同志のまま、わざわざ精神病患者にして、或る念の入った錯覚に陥れて、二人が本気でクッ付き合うように仕向けている……と考えられぬ事もないが、併《しか》し、いくら何でもソンナ残忍不倫を極めた、奇怪千万な学理実験が、人間の心と、人間の手で行われ得るとは考えられない。
……そもそもこうした矛盾と不可解は、どこの行き違いから来たものであろう。
……二人の博士はドウシテこんなに私を中心にして騒ぎまわるのであろう……。
[#ここで字下げ終わり]
……と……。
けれども、それは詰るところ無用の努力であった。そんな風に考えれば考えるほど一切がこんがらがって来て、推測すればする程不可解に縺《もつ》れ乱れて来るばかりであった。しまいには考える事も推測する事も出来なくなって、唯、眉をしかめて、唇を噛んでいる石像のような自分の姿を頭の中で想像しつつ、凝然と眼を閉じているばかりとなった……。
……コツコツ……コツコツ……扉をたたく音……。
私はギクンとして眼を見開いた、魘《おび》えたようになって入口の扉を見た。もしや若林博士ではないかと思って……けれども正木博士は見向きもしないで頬杖を突いたまま、ビックリする程大きな声を出した。
「オーイ……這入れエーッ……」
その声が室中《へやじゅう》に響き渡ると間もなく鍵穴をガチャガチャいわせて、扉を半分ばかり開きながら這入って来た者を見ると、それは九州帝国大学の紺のお仕着せを着たテカテカ頭の小使いであった。もう余程の老人らしく、腰を真二つに折り屈《かが》めていたが、右手に支えた塗盆《ぬりぼん》の上に煤《すす》けた土瓶と粗末な茶碗|二個《ふたつ》とを載せて、左手にはカステラを山盛りにした菓子器を捧げながら、ヨチヨチと大|卓子《テーブル》に近づいて、不思議そうな顔をして見ている正木博士の前に置いた。そうして何かに魘《おび》えているかのようにオドオドと禿頭《はげあたま》を下げたが、揉《も》み手をしいしい首を擡《もた》げて、正木博士と私の顔を霞んだ眼で等分にキョロキョロと見比べると、又一つ、床に手が届くくらい馬鹿叮嚀なお辞儀をした。
「ヘイヘイ、今日はまことによいお天気様で……ヘイヘイ……これはあの、学部長様からのお使いで、お二方《ふたかた》様のお茶受けに差し上げてくれいとの、お申し付けで御
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