究によって摘発されたる第二回の発作の内容の説明が、如何に悽惨、痛烈、絢爛《けんらん》、奇怪にして、且つ、ノンセンスを極めたものがあるか。しかも、そうした研究の道程が、何故《なにゆえ》に吾輩の自殺の原因にまで急変し、進展して来たか……というような事を徹底的に観察した後《のち》でなければ、犯人の有無は決定されぬ筈だ。「サテはそんな事だったか……ウ――ン」と眼を眩《まわ》される筈だ……とまず一本|凹《へこ》ましておいて……サテ、この事件に対する吾輩の研究が、その後どんな風に進展して行ったかという実況を、引き続き天然色浮出し映画について「御座います」抜きで説明する段取りとなる。
 ところで吾輩みたいな田舎活弁の、しかも新米の映画説明の口上から「御座います」を抜いてしまったら、何の事はない素人の書いたシナリオの朗読みたいなものになるだろう。吾輩不幸にしてシナリオだの支那料理だのいうものを製造した事がないから様子がよくわからないが、まだ夜が明ける迄には、だいぶ時間が余っているから、今生《こんじょう》のふざけ序《ついで》にそのシナリオなるものを一つやっつけ[#「やっつけ」に傍点]てみよう。但《ただし》、ここで改めて断っておくが、こんな風に事件の核心である心理遺伝の内容を一番あとまわしにして、外側の事実から順々に中味へ中味へと支那料理……オット、シナリオにして行くのは筋がチャンポンという洒落《しゃれ》ではない。この事件に関する吾輩の記録は、悉《ことごと》く、事件そのものが、吾輩の眼界に這入って来た当時のプロットによって並列されているので、この順序を研究しただけでもこの事件の真相はあらかたわかるという……この点に就ては憚《はばか》りながら、極めて科学的な、絶対に誤魔化《ごまか》しの無い俯仰《ふぎょう》天地に恥じざる真実の記録と信ずる次第で……御座います……かね……ヤレヤレ。

 【字幕[#「字幕」は太字]】 呉一郎の精神鑑定=大正十五年五月三日午前九時、福岡地方裁判所応接室に於ける。
 【映画[#「映画」は太字]】 正木博士は羊羹《ようかん》色の紋付羽織、セルの単衣《ひとえ》にセル袴《ばかま》、洗い晒《ざら》しの白足袋という村長然たる扮装《いでたち》で、入口と正反対の窓に近い椅子の上に、悠然と葉巻を吹かしつつ踏ん反《ぞ》りかえっている。
 中央の丸|卓子《テーブル》の上には正木博士所
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