をお聞きになって御覧なされませ。嬶《かかあ》に御案内を致させますから……。
――ヘイ……お八代さんは今では半|狂乱《きちがい》のようになったまま足を挫《くじ》いて床に就いているそうで御座います。頭の怪我《けが》は大した事はないとの事で御座いますが、云う事は辻褄《つじつま》が合うたり合わなんだりするそうで、道理《もっとも》とも何とも申しようが御座いません。腰が抜けておりますので、お見舞いにも行かれませんで……。
――私が宗近(医師の姓)へ走らなかったので万事が手遅れになったように申した者もあったそうで御座いますが、これは無理で御座います。オモヨさんが絞め殺されたのは今朝の三時から四時の間だと、宗近さんが私の腰を診《み》に来た時に云うておりました。蝋燭の減り加減がやっぱりそれ位の見当で御座いましたそうで。……ヘエ……あとは只今お話し申し上げた通りで御座います。お八代さんがたしか[#「たしか」に傍点]にしておれば何もかもわかる筈で御座いますが、今も申上げました通り、若旦那を怨《うら》んだような事を云うかと思えば……早う気を取り直してくれよ。お前一人が杖柱《つえはしら》……なぞと夢うつつに申しておりますそうで、トント当てになりませぬ。
――まだ警察の方は一人も私の処へ尋ねてお出でになりませぬ。……と申しますのは、この騒動に一番先に気が付きました者は、お八代さんの金切声をきいて馳け付けた、泊り込みの若い者しか居りませぬ。警察の方はそれから後《のち》の話を詳しく調べてお帰りになりましたそうで……私はもうその前から用心を致しまして、もし自分が疑われてはならぬと思いましたから、宗近先生に口止めを頼みましたが僥倖《しあわせ》と大騒動に紛《まぎ》れて、誰が宗近先生を招《よ》びに行ったやら、わからずにおりましたところへ、思いがけない先生のお尋ねでもうもう恐れ入りました。ヘイ。何一つ隠し立ては致しません。なろう事なら先生のお力でこの上警察に呼ばれぬようにお願い出来ますまいか。この通り腰が抜けておりますし、警察と聞いただけでも私は身ぶるいが出る性分で御座いますから……ヘイ……。
◆第二参考[#「第二参考」は太字] 青黛山如月寺縁起《せいたいざんにょげつじえんぎ》
(開山|一行上人《いちぎょうしょうにん》手記)
――註――同寺は姪浜《めいのはま》町二十四番地
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